日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は14日、インターネットの動画配信を通じて講演し、新型コロナウイルス対策として検討中の中小企業の資金繰りを支える新たな資金供給制度を早期に実施するため、6月15、16日に予定する定例の金融政策決定会合の前に臨時会合を開く可能性を示した。黒田総裁は新制度について「次回6月の決定会合を待たずに、決定・実施することも視野に入れて、早急な検討を進めている」と説明した。
新制度は4月の決定会合で検討を始めていた。政府の緊急経済対策で実質無利子・無担保の融資を行う金融機関を対象に日銀がその原資をゼロ金利など有利な条件で貸し出す仕組みを検討するが、黒田総裁は「現在、制度の詳細を詰めている」と述べるにとどめた。
黒田総裁は企業の資金繰りについて、日銀や政府の既存の支援策が一定の効果を発揮しているとの認識を示した上で、「依然として強いストレスがかかっている」と指摘した。
また、新型コロナ対策の最優先課題として「感染拡大の収束にめどがつくまで雇用・事業・国民生活を守ることだ」と述べた。日銀の役割としては「(企業の)資金調達の円滑確保と金融市場の安定維持」をあげ、「中央銀行として、できることを何でもやる覚悟だ」と強調した。
新型コロナの影響については「世界中で経済活動が抑制されて経済への下押し圧力はきわめて大きい。日本経済も当面、きわめて厳しい状況が続き、4~6月期の成長率も落ち込む」と説明。「必要があれば、躊躇(ちゅうちょ)なく追加的な金融緩和措置を講じる」と改めて強調した。
日銀が掲げる物価上昇率2%の目標については、物価上昇の勢いが損なわれているとして「かなりの時間がかかる」と述べた。