通級指導教室:子供たちの「学びたい」を叶えるための個別支援とは?

学びに困難を抱える子供たちのための「通級指導教室」。文部科学省の調査によると、利用者数は増加の一途を辿っています。しかし、特別支援教育の経験不足の教員が多いのも現状です。子供たちが自分らしい学び方を見つけられるよう、通級指導教室ではどのような取り組みが行われているのでしょうか? 埼玉県の公立中学校で17年間、通級指導を担当する三富貴子先生に伺いました。

通級指導教室:多様なニーズに応える支援の現場

熊谷市立富士見中学校の通級指導教室では、ノートが取れない、課題が提出できない、人間関係に悩むなど、様々な困難を抱える生徒たちが支援を受けています。全校生徒の約3%に当たる20人が通級を利用し、さらに他校から6人が放課後に通っています。学習支援だけでなく、経済的な困難を抱える家庭への生活支援も行っているとのことです。

通級指導教室の様子通級指導教室の様子

学習支援:諦めていた「学び」への扉を開く

多くの生徒は小学2年生頃から学習に躓きを感じ、諦めてしまう傾向があるそうです。特にLD(学習障害)の子供たちは、一般的な学習方法では漢字の習得が難しく、学習意欲を失ってしまうケースが多いといいます。しかし、三富先生は「勉強ができなくてもいい」と思っている子供は一人もいないと断言します。子供たちの「学びたい」という気持ちを尊重し、個々の特性に合わせた学習方法を模索することが重要です。「なぜできなかったのか」「どうしたらできるのか」を丁寧に聞き取り、知能検査の結果も参考にしながら、一人ひとりに最適な学び方を見つけていきます。

個別指導:一人ひとりの「得意」を伸ばす工夫

例えば、書写が苦手なADHDやLDの子供には、お手本を1行ずつ切り離して見やすくする教材を作成。漢字の学習では、視覚的に理解しやすい子供には絵で解説したプリント、触覚的に理解しやすい子供にはモールで漢字を立体的に作るなど、様々な工夫を凝らしています。タブレット端末の活用も積極的に取り入れ、生徒の学習をサポートしています。

教育心理学の専門家、山田先生(仮名)は、「子供たちの学習意欲を高めるには、成功体験を積み重ねることが重要です。個々の特性に合わせた学習方法を提供することで、学習のハードルを下げ、自信を持たせることができるでしょう」と述べています。

タブレット端末:学習の新たな可能性を広げるツール

同校では、生徒全員がタブレット端末を自由に利用できる環境です。文字を書くのが苦手な生徒は板書を撮影して保存したり、通級指導で受けられない授業の板書を友達が共有したりと、学習ツールとして活用されています。タブレット端末は、生徒一人ひとりが自分に合った学習方法を選択できるという点でも大きなメリットがあります。

多様な学びのスタイルを尊重する

手書きが得意な生徒もいれば、タブレット端末の方が効率的に学習できる生徒もいます。大切なのは、子供たちが自分に合った方法で学べる環境を整えること。三富先生は、タブレット端末は生徒全員がいつでも使える環境であるべきだと強調します。

まとめ:子供たちの未来を拓く通級指導

通級指導教室は、学びに困難を抱える子供たちが自分らしい学び方を見つけ、学習意欲を取り戻すための大切な場所です。個々のニーズに合わせたきめ細やかな支援、そしてタブレット端末のようなICTツールの活用は、子供たちの可能性を広げ、未来を拓く力となるでしょう。