6月18日の東京都知事選の告示まで1カ月を切り、野党の統一候補擁立に暗雲が漂っている。新型コロナウイルス対応で再選を目指すとみられる現職の小池百合子知事に注目が集まる中、有力な対抗馬が見つかっていない。野党内では不戦敗容認論だけでなく、小池氏を支持する声さえ出ており、主要野党をまとめる立憲民主党は八方塞がりの状況だ。
「緊急事態宣言下で一生懸命取り組んでいる首長の足を引っ張るようなことは望ましくない」
国民民主党の玉木雄一郎代表は20日の記者会見でこう述べ、小池氏を名指しこそしなかったが、対抗馬擁立に慎重な考えを示した。
背景には、小池氏が新型コロナ対応で陣頭指揮にあたっていることに加え、党が支持を受ける連合の意向がある。連合東京と小池氏は良好な関係で、連合関係者は「国民民主は野党統一候補なんて言わず、小池氏を支持すればいい」と打ち明ける。玉木氏が小池氏の設立した旧希望の党に所属していた経緯もある。
玉木氏は記者会見で「まず野党第1党がどうするのか」とも語り、立民の動向を見極める考えを示した。
だが、当の立民にも諦めムードが漂っている。一時、れいわ新選組の山本太郎代表の擁立を検討していたが、山本氏は、コロナ対応で露出が増える小池氏の対抗馬として立つのは「難しい」と消極的だ。
立民としては、旧希望の党への合流反発から生まれた結党経緯や来年夏の都議選を考えると、候補者を擁立したいのが本音だ。都連関係者は「戦わなければ負けないが、戦わない軍隊は弱くなる」と主張する。このため、参院東京選挙区選出で知名度のある蓮舫副代表の出馬に期待を寄せる声もあるが、立民の都連幹部は「彼女は出馬する気がない」と肩を落とす。
そんな中、主戦論を唱えるのが共産党だ。穀田恵二国対委員長は20日の記者会見で「不戦敗は避けたい。可能であれば、小池氏に対抗できる野党統一の力を作っていきたい」と述べた。
過去に共産などの支援で知事選に出馬した元日弁連会長の宇都宮健児氏の擁立論も取り沙汰される中、立民幹部は「独自候補の擁立はもう無理だ。最後は立候補した野党系候補に乗るしかない」とさじを投げる。
それでも、立民の枝野幸男代表は「まだ何が起こるか分からない。候補を出す可能性は十分ある」と周囲に語り、強気の姿勢を崩していない。(千田恒弥、田村龍彦)