新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のさなか、世界保健機関(WHO)の総会がテレビ会議方式で開かれた。
浮かび上がったのは、新型ウイルスの発生国である中国がなんら反省点も表明せずに、わが物顔で振る舞うことを許すWHOのおかしさである。これでは国際社会は結束してパンデミックに対応できない。
中国の異様な影響力を取り除き、国連の専門機関として公正な姿を取り戻す改革が必要だ。
日米など多くの国が台湾のオブザーバー参加を求めたが、WHOは中国の圧力に屈し認めなかった。中国の隣に位置しながら世界で最もうまく新型ウイルスを封じ込めてきた台湾の参加は今こそ必要だ。認めなかったのは人類の命と健康よりも「台湾封じ込め」を優先する中国の政治的立場にWHOがくみしたことを意味する。
中国の習近平国家主席は演説で、新型ウイルス対応でWHOが「重大な貢献」をしたと称(たた)えた。自国については「終始一貫してオープンで透明性があった」と述べ、今後2年間でウイルス対策へ20億ドルを拠出すると表明した。
米国のアザー厚生長官は「世界が必要としていた情報の(中国からの)入手にWHOが失敗したことが、感染が制御不能になった主要原因だ」と述べ、中国とWHOの初期対応を批判した。説得力ある指摘である。中国は今も武漢への独立した国際調査団を認めていない。初動の実態を詳(つまび)らかにしなければ、今と将来のパンデミックに対処できない。
欧州連合(EU)や日本、オーストラリアなどが総会へ提出した決議は、WHOなどの初期対応に問題がなかったか、「独立した検証」を早期に行うよう求めた。
テドロス事務局長は総会でこれに応じる態度を示した。だが、習氏は演説で「(新型ウイルスの)制御後」にWHOが主導して検証するよう唱えた。先送り論であり、中国が決議に賛成したといっても意味ある検証は難しい。
トランプ米大統領はテドロス氏への公開書簡で中国寄りの姿勢を批判し、30日以内に改善できなければ資金拠出を恒久的に停止し、脱退も検討すると通告した。
日本など先進7カ国(G7)、オーストラリアなど各国も、台湾加盟やテドロス氏辞任を含む抜本改革を強く迫っていくべきだ。