安倍晋三首相は21日夕、週刊文春に報じられた賭けマージャンを認めた東京高検の黒川弘務検事長が辞職を申し出たことについて「人事については最終的には内閣として決定したので、首相として当然、責任がある。批判は真摯(しんし)に受け止めたい」と述べた。首相官邸で記者団に語った。
首相はまた、検察官を含む国家公務員の定年を延長する法案の今国会での成立見送りに関し、自民党の世耕弘成参院幹事長が公務員の定年延長自体を見直す考えを示したことを紹介。そのうえで「党にそうした意見があることは承知している。そういうことも含め、しっかりと検討していく必要がある」と述べた。
黒川氏をめぐっては、 週刊文春(電子版)の20日の報道を受けて、与野党から批判の声が上がり、政府・与党内でも進退論が浮上していた。義家弘介法務副大臣は21日の衆院総務委員会で、黒川氏に関し「現在進行形で事実関係の確認を行っている。聴取している」と述べた。
報道では、黒川氏は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が続いていた今月1日夜、東京都中央区内にある産経新聞社会部記者宅を訪れ、産経記者2人や朝日新聞社員と6時間半にわたって賭けマージャンをした後、産経記者がハイヤーで目黒区内の黒川氏宅まで送ったとしている。「密閉空間に4人が密集し、密接な距離を楽しむマージャンは『3密』そのもの」とし、今月13日にも同様の行動があったなどと報じた。
黒川氏は東大法学部を卒業後、昭和58年に任官。東京地検特捜部で四大証券事件などの捜査を担当した後、法務省で秘書課長や官房長、法務事務次官など枢要ポストを歴任した。
平成22年に大阪地検特捜部の押収資料改竄(かいざん)事件が発覚した際には松山地検検事正に異動してわずか2カ月余りで大臣官房付に戻り、事件を受けて設置された「検察の在り方検討会議」の事務局を取り仕切った。
与野党問わず国会議員に広い人脈を持っているとされ、「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法の成立にも尽力。官房長と次官の在任期間は計約7年半と長期に及んだ。