スイッチ2転売の現在地:発売1週間で見えた「転売ヤーの誤算」と対策効果

2025年6月12日、多くの期待を集めて発売されたNintendo Switch 2は、発売からちょうど1週間を迎えました。発売前や初日には、SNSやネットニュースで製品の品薄とそれに乗じた「転売」が大きな問題として取り沙汰されましたが、その後の状況はどう変化しているのでしょうか。フリマアプリでの調査を通じて、転売ヤーが直面している現実、彼らの「誤算」ともいえる状況、そして任天堂による転売対策の効果について、詳細をお伝えします。発売直後の高額な転売価格がどう変化し、本当に欲しいユーザーが直面している課題とは何かを探ります。

メルカリ調査で判明した「スイッチ2転売価格」の現状

実際に大手フリマアプリ「メルカリ」で「Nintendo Switch 2」の出品状況を調査したところ、転売ヤーたちの苦境が浮き彫りになりました。6月12日時点で、6万円台後半から8万円台という価格帯で大量の商品が出品されていますが、多くが「いいね」はついても購入されずに残っている状態です。発売当初、一部では8万円、9万円、さらには10万円を超える「強気」な価格設定も見られましたが、現在の相場は明らかに下落しており、転売による莫大な利益を期待していた層にとっては想定外の展開となっています。

直近の取引履歴を確認すると、最も安価で取引が成立していたのは6万2000円の「Nintendo Switch 2(日本語・国内専用)」でした。この価格で転売による利益を試算してみましょう。メルカリの販売手数料10%にあたる6200円と、送料として仮に850円(匿名配送、宅急便サイズなどを想定)を差し引くと、出品者の手元に残るのは5万4950円となります。Nintendo Switch 2の定価は4万9980円(税込)ですから、ここから利益を計算するとわずか4970円です。商品の確保にかかった労力、出品作業、購入者とのやり取り、梱包、発送といった一連の手間を考慮すると、到底「割の良いビジネス」とは言えないでしょう。

とはいえ、全ての転売品が低価格で取引されているわけではなく、平均すると6万5000円前後で売却されているケースが多く見られます。この価格であれば、手数料と送料を差し引いても7000円から8000円程度の利益は確保できている計算になります。本来であれば正規価格で購入できたはずの多くのユーザーが、依然として定価での入手が困難な状況が続いていることから、転売行為そのものがもたらす被害が根本的に解決されたわけではないこともまた現実です。

コメント欄に見る購入希望者の「転売への怒り」

メルカリの各出品ページ、特に価格が高めに設定されているものや、定価での入手が難しい状況を反映した出品のコメント欄には、購入を希望するユーザーからの厳しい指摘や感情的な書き込みが目立ちます。

「転売目的の購入はメーカーが禁止しており、詐欺罪に問われる可能性もあります。ご注意ください。」
「本当に欲しい人が買えないのは全部転売のせいです。子供が欲しがって大泣きしています。大人がこんなことして恥ずかしくないのですか?」
「何のために任天堂が抽選販売にしたと思ってるんですか?平然と転売してるのが信じられません。情けない。」

こうしたコメントからは、転売行為が本当に商品を必要としている人々に与える深刻な影響と、それに対する強い怒りや失望が如実に表れています。中には冷静な視点からの指摘もありますが、感情を剥き出しにした非難の書き込みも多く見られ、転売ヤーを糾弾しようとするユーザー側の姿勢が鮮明になっています。

任天堂の「保証書なし」戦略が転売ヤーを苦境に

フリマアプリでの出品状況を調査する中で、特に注目すべき点として、購入希望者側からの「保証」に関する問い合わせが多く見られたことが挙げられます。

「購入時のレシートを付けていただけますか?レシートがないとメーカー保証が受けられないと聞きました。」
「納品書は同封してもらえますか?保証に必要なので。」

ニンテンドースイッチ2には、従来の製品のように保証書カードが付属しておらず、代わりに購入を証明するレシート、領収書、またはECサイトの納品書などが保証の役割を果たす仕組みになっています。この変更が、転売ヤーにとって新たな問題を引き起こしています。

出品者の多くは、こうした問い合わせに対して「個人情報保護の観点から、納品書の同封は致しかねます」「レシートはお渡しできません」といった定型的な返信をしています。これは、レシートや納品書には購入者の氏名や住所などの個人情報が記載されているため、これらを転売品に同梱してしまうと、購入者を通じて自身の身元が特定されてしまうリスクがあるためです。転売ヤーは身バレを避けたい一方、購入希望者は保証を受けるために購入証明を求めるという、両者の間で利害が一致しない状況が生まれています。

ニンテンドースイッチ2本体の画像。フリマアプリでの転売状況に関する記事。ニンテンドースイッチ2本体の画像。フリマアプリでの転売状況に関する記事。

SNS上でも「転売でスイッチ2買っても保証効かないらしいよ」「転売ヤーから買うと保証なしになるリスクがある」といった情報が拡散されており、転売品を購入することへの警戒感が以前よりも高まっています。この「保証が受けられないリスク」が、転売品の需要を抑制する効果を少なからず生んでいると考えられます。購入者は、定価より高い金額を払うだけでなく、正規の保証も受けられない可能性があるという二重のリスクを負うことになるため、転売品への手が出しにくくなっているのです。

転売対策の効果と今後の課題

任天堂が実施したと見られる、製品供給の調整(一部では予想よりも潤沢だったとの声も)や、販売方法の工夫(抽選販売など)、そして保証に関する仕組みの変更といった一連の転売対策は、発売から1週間という短期間において、確実に一定の効果を発揮していると言えるでしょう。メルカリでの価格大幅下落や、大量の売れ残りがその具体的な証拠です。SNS上でも「スイッチ2の転売価格、思ってたより低いね」「転売ヤーざまぁみろ」といった声が散見されており、ユーザー側も変化を感じ取っています。

しかしながら、これで転売問題が完全に解消されたわけではありません。依然として、正規ルートでの定価購入は容易ではなく、一部のユーザーは諦めて転売品に手を出している状況も確認できます。SNSでは「定価で買えるようになるまで、いくら時間がかかっても我慢します」という強い意志を示すユーザーが多い一方で、どうしてもすぐに手に入れたい、あるいは情報弱者であるために転売品を購入してしまう層も存在します。

メルカリでの調査を通じて見えてきたのは、転売ヤーが当初期待していたような「濡れ手で粟」の状況からはほど遠い現実と、転売品を購入する側が負う保証という名の「リスクの高さ」です。任天堂の周到な対策により、転売行為から得られる「旨味」は大幅に削られているのが現状です。しかし、本当に商品を求めている全ての人々が、適正な価格で、安全に製品を購入できる環境を整備していくことは、今後も継続して取り組むべき重要な課題として残されています。