【カイロ=佐藤貴生】最貧国が多いアフリカは新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受ける恐れがある。アフリカでエボラ出血熱の感染防止に携わった経験を持つ国連食糧農業機関(FAO)近東・北アフリカ地域事務所(エジプト・カイロ)の総務部チーフ、池田明子さん(52)が取材に応じ、「アフリカでは食料不足が夏に向けて課題になる」との見方を示した。
■穀物食い荒らされ…飢餓の恐れ
ケニアやスーダンなど東アフリカでは年初からバッタが大量発生し、中東にも広がって穀物を食い荒らしている。バッタは6月までにさらに増え、世界人口の1割にあたる人々の暮らしに影響が出るともいわれ、池田さんは「FAOは各国と協力しながらヘリによる殺虫剤の散布などを行いたい」と話した。
また、アフリカの人口の6割は地方に分布し、家族単位の農業が主体だといわれる。池田さんは「(新型コロナの感染拡大防止のための)外出制限が長期化すれば、農作物を運ぶトラックの運転手の確保が難しくなるなどして供給が途絶える可能性がある」と飢餓の拡大に懸念を示した。
■埋葬、見舞いNG…周知に奔走
池田さんは西アフリカ・リベリアに2012年から3年間滞在した際、エボラ熱の大流行で数千人が死亡する事態を目の当たりにした。エボラ熱は血液など体液を介して感染し、致死率が高いことで知られる。国連平和維持活動(PKO)のリベリア支援団(UNMIL)のミッションの一員ながら、遺体埋葬や病院への見舞い、食用の野生動物の市場などに行かないことを周知する活動をした。
「本来の業務は停戦監視や選挙実施の支援だったが、エボラ熱で優先度が変わった」という池田さんは、新型コロナの感染防止対策は本来の目的と並行し、すでに多くのPKOミッションで実施されていると説明した。
■経済打撃「エボラの比でない」
新型コロナは世界各地に拡大し、今回の外出制限などによる経済的打撃は「エボラ熱のときとは比べものにならない」という池田さんは、「アフリカでは手洗いに不可欠な清潔な水の入手も難しい。蛇口を回せば殺菌済みの水が出てくる日本と違い、状況はとても厳しい」とし、国連はアフリカを含む世界各国と連携して封じ込めに挑む考えだと話した。
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いけだ・あきこ 早大卒。国連職員としてケニアやレバノンなどで勤務。イラクやコートジボワール、リベリアで平和維持活動に従事した。昨年末からFAO近東・北アフリカ地域事務所の総務部チーフを務める。