政府が今春発足した国家安全保障局(NSS)経済班について、職員数を現在の15人から30人態勢への倍増を検討していることが30日、分かった。令和3年度予算案の概算要求に必要な経費を盛り込む方向。国民の生命を脅かす新型コロナウイルスなどの感染症が国の安全保障を揺るがす事態を踏まえ、厚生労働省などの専門知識に精通する職員を増やし、態勢を強化する必要があると判断した。
4月に正式発足したNSS経済班は新型コロナの流入阻止のための入国規制など水際対策や、中国企業による買収を念頭に、改正外為法に基づいて高度な医薬品などを扱う日本企業への出資規制を手がけてきた。
新型コロナ感染拡大を受けた3~5月の日米首脳電話会談で、安倍晋三首相とトランプ大統領は「医療は安全保障の真ん中にきている」(政府高官)との認識で一致した。政府は今後、海外生産に依存してきたマスクなど医療器具の国内生産への回帰や、抗インフルエンザ薬「アビガン」の各国供与を通じた世界的流行の封じ込めなど、米国との連携を軸に感染症対策を本格化させる考えだ。
ただ、現在の経済班は経済産業省出身の審議官と、総務、外務、財務、警察の各省庁の職員らで構成され、医学的な知見を持つ職員は少ない。新型コロナ対策では、政策立案が厚労省と経産省、外務省などに分散したために初動対応が遅れたとの指摘もある。首相官邸に権限を一元化し、経済と安全保障を包括的に判断する態勢づくりを急ぐ。
増員にあたっては、厚労省のほか、農林水産省や水産庁の職員を投入することも検討する。アフリカで大量発生し、農作物を食い荒らす「サバクトビバッタ」による食糧危機への対応や、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域での中国公船の領海侵入を踏まえた海洋権益保護も強化する。