自民党は1日、会員制交流サイト(SNS)で誹謗(ひぼう)中傷を受けていた女子プロレスラーの木村花さんが急死した問題を受け、プロジェクトチーム(PT)の会合を開き、対策を協議した。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査(5月30、31両日)では6割以上が規制強化を求めているが、「表現の自由」が損なわれることへの懸念も聞こえてくる。(長嶋雅子、市岡豊大)
「情報開示請求の権利はあるが、実効性はどうなのか」
PT座長の三原じゅん子女性局長は1日の会合後、記者団にこう述べ、対策の必要性を訴えた。ネットで中傷にさらされた経験があるタレントのスマイリーキクチ氏も出席し、記者団に「表現の自由が今、『表現の無法』になっている。皆が安全に使えるようなインターネット環境にしたい」と訴えた。
投稿者情報の開示手続きを定めたプロバイダー責任制限法は、中傷された被害者がネット接続業者(プロバイダー)などに開示請求できるとしているが、「権利侵害が明らかでない」といった理由で実現しないケースが多い。裁判手続きに入れば費用も時間もかかるため、PTは法改正を含め迅速な開示に向けた方策を探り、悪意のある投稿の抑止を目指す。17日の国会会期末までに提言をまとめる方針だ。
合同世論調査では、63・4%が「新たな法整備による規制強化が必要」と回答した。男女ともに上の世代ほど規制強化を求める傾向があった。総務省は投稿者を特定する手続きを簡略化するほか、発信者の特定を容易にするために携帯電話番号を開示対象に含めることも視野に入れている。
一方、野党は人権侵害対策という必要性は共有しているが、政権批判などを抑制するような動きには警戒感を強める。国民民主党の玉木雄一郎代表は5月27日の記者会見で、ネット規制について「表現の自由や正当な批判が抑制されることがあってはならない。慎重な検討が必要だ」と牽制(けんせい)している。