【ワシントン=塩原永久】米国の景気循環を判定する米経済研究所(NBER)は8日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年2月をピークに米国が景気後退期に入ったと発表した。金融危機「リーマン・ショック」後の2009年6月に始まった景気拡大期は、記録をさかのぼれる1854年以降で史上最長となる10年8カ月(128カ月)で終了した。
NBERは、景気収縮の期間や、幅広く経済活動が落ち込んだかどうかなどを考慮し、景気後退を認定する。通常、景気後退期に入ってから半年~1年以上、経過してから判定を下す。
だが今回は、コロナの流行と感染防止策が「過去の景気後退とは異なる特徴と力学をともなう落ち込み」(NBER)につながったと説明。急激な景気収縮が起きたため、早い段階で景気後退を認定した。
NBERの判定では、四半期ベースで見た景気の山は、2019年10~12月期だった。感染を防ぐための営業規制や外出制限の措置により経済活動が停滞し、「雇用や生産の落ち込みが空前の規模」になったと指摘している。
失業率は4月に14・7%と戦後最悪を記録したが、さらなる悪化が見込まれた5月は13・3%に踏みとどまった。エコノミストからは、今回は過去の後退期より短期で終わる可能性があるとの見方が出ている。
前回の景気後退期は、サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融危機が起きた07年12月~09年6月の18カ月だった。今年2月まで続いた拡大期より以前の最長記録は、1991年3月~2001年3月の10年(120カ月)。