【ニューヨーク=上塚真由】米中西部ミネソタ州の黒人男性暴行死事件を受けた抗議デモが暴徒化した問題をめぐり、米紙ニューヨーク・タイムズは7日、「軍を派遣せよ」と題した共和党上院議員の寄稿が不適切だったとして、論説欄の編集責任者、ジェームズ・ベネット氏が辞任したと発表した。米国では人種差別の抗議デモをめぐる報道の対応が問われるケースが相次ぎ、メディア側も神経をとがらせている。
同紙に寄稿したのは、トランプ米大統領の擁護者として知られるトム・コットン議員。3日午後に同紙電子版に掲載され、「暴徒が米国の多くの都市を無政府状態に陥れた」と主張。治安回復のためには「圧倒的な力を見せることだ」と訴え、トランプ氏が示唆した米軍派遣を肯定した。
直後に、ソーシャルメディアで社員や読者からの批判が殺到。サルツバーガー社主は4日朝、社員向けに「多様な意見の公開性の原則を信じている」と掲載の判断を擁護したが、反発はさらに過熱。同紙は5日、「編集作業が稚拙で欠陥があった」とし、「わが社の(掲載の)水準に達しておらず、公開されるべきではなかった」と結論づけた。同紙によると、ベネット氏は事前に寄稿を読んでいなかったという。
またコットン氏が寄稿で「アンティーファのような左翼過激派の一団が黒人男性の死を悪用して、デモに入り込んでいる」と主張した点について、同紙は「裏付けはなく、広く疑問視されている」と説明した。 これに対し、コットン氏はツイッターで「デモ隊に対してではなく、暴動を止めるために後方支援として米軍の活用を求めた」と主張し、同紙の対応に反発を強めている。
一方、東部ペンシルベニア州の地元紙フィラデルフィア・インクワイアラーでは2日、「建物も大切」との見出しを付け、暴動の被害を伝える記事を掲載。抗議活動のスローガン「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命も大切)をもじり、不謹慎だと抗議が殺到した。同紙は6日謝罪し、編集長の辞任を発表した。