【主張】香港デモ1年 国際社会の圧力絶やすな


 香港の高度な自治を保障する一国二制度を骨抜きにしようとする中国政府と香港当局の動きに対し、香港で100万人規模の反政府デモが起きてから1年を迎えた。

 民衆の怒りは大きなうねりとなり、香港政府の林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は、きっかけとなった逃亡犯条例改正案について、完全撤回の表明を余儀なくされた。

 ところが今、香港の人々には絶望感が広がっている。中国が市民の基本的人権を制限する国家安全法を今月にも導入するからだ。このままでは、「自由主義の砦(とりで)」が全体主義の手に陥落する。

 国際社会は香港の人々の心情と危機感に寄り添い、安全法撤回を強く迫らなくてはならない。その覚悟と行動が求められている。

 すでに米国は香港への関税優遇などの撤廃を表明し、英国は香港の人々に英市民権取得の道を広げると表明した。一国二制度での香港返還を定めた中英共同宣言に反する無法を断じて認めない。

 日本政府は「深い憂慮」を表明し、駐日中国大使に日本の立場を申し入れた。だが、米英ほど強い行動がみられないのが残念だ。

 先進7カ国(G7)は中国に再考を迫る外相の共同声明を検討中だ。日本はこれを主導しているというが、中国に気兼ねしてトーンを弱める愚は許されない。

 1年前の逃亡犯条例改正案は香港から中国本土への容疑者引き渡しを可能にするもので、デモは最大200万人に及んだ。これを香港政府は「暴動」と呼び、警察は催涙弾を容赦なく浴びせた。

 結局、昨年9月に改正案撤回が表明され、区議会選では民主派が親中派に勝った。今月4日にあった天安門事件の追悼集会でも各地で1万人以上が集まった。

 こうした光景はもう見られなくなる。集会やデモが「国家反逆行為」「テロ行為」とみなされる恐れがある。9月の立法会選で民主派の勢いをそぐ思惑もあろう。

 民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんは、中国の狙いについて「香港の人々の国際的な交流を阻止することにある。国際社会の圧力を中国が非常に恐れていることの裏返しだ」と述べた。

 だからこそ、人々は国際社会に一縷(いちる)の望みをかける。特にアニメ文化で育った若者は日本を注視している。安倍晋三政権はそれを忘れず、中国に対する国際的行動の先頭に立たなくてはならない。



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