アゼルバイジャン、旅客機墜落でロシア提訴へ:関係悪化とウクライナ支持の背景

旧ソ連構成国アゼルバイジャンは、昨年12月に発生したアゼルバイジャン航空旅客機墜落事件を巡り、ロシアを国際司法機関に提訴する方針を固めた。イルハム・アリエフ大統領は、ロシアからの侵略に直面するウクライナに対し「降伏するな」と呼びかけており、アゼルバイジャンとロシアの関係は悪化の一途をたどっている。

アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領。ロシアとの関係悪化や旅客機墜落問題、ウクライナ支援に関する発言に注目が集まっている。アゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領。ロシアとの関係悪化や旅客機墜落問題、ウクライナ支援に関する発言に注目が集まっている。

旅客機墜落事件の経緯とアゼルバイジャンの主張

問題の旅客機は、アゼルバイジャンの首都バクーからロシア南部チェチェン共和国のグローズヌイへ飛行中、ロシア軍による防空ミサイルの誤射によって撃墜されたとの見方が強まっている。この事件に対し、ロシアのプーチン大統領は謝罪したものの、ロシア側は墜落の原因について具体的な明確化を避けている状況が続いている。

アリエフ大統領の対露批判と国際提訴の動き

ロシア通信によると、アリエフ大統領は4月19日に自国で開催されたフォーラムで、ロシア側の回答が「調査継続」に留まっていることを厳しく非難した。同大統領は、国際司法機関への提訴準備を進めていることをロシア側に既に通達したと説明し、この問題に対するアゼルバイジャンの断固たる姿勢を示した。アゼルバイジャンは、旅客機墜落の真相究明と責任の明確化を国際社会に訴える構えだ。

ウクライナへの支持と変化する地政学的関係

アゼルバイジャンは、ウクライナ侵略に関しても明確な対ロシア批判の姿勢を鮮明にしている。同フォーラムでウクライナの記者からの質問に対し、アリエフ大統領は「(ロシアに)降伏すべきでない」「占領に決して同意しない。これが最大の助言だ」と強調し、ウクライナへの強い連帯を示した。

また、アゼルバイジャンは3月、長年にわたる紛争状態にあった隣国アルメニアとの間で和平条約文書に合意したと発表した。両国の和平協議にはロシアも協力姿勢を示していたものの、アリエフ大統領が謝意を示したのは、ロシアのプーチン大統領ではなく、ドナルド・トランプ元米大統領の関与に対してだった。これは、アゼルバイジャンが欧米諸国との連携を強化し、ロシアとの関係を疎かにしている現状を反映しているとみられる。ロシアのある軍事ブロガーは4月19日、SNSに「アゼルバイジャンは現在、ロシアにとって地政学上の敵だ」と投稿し、両国関係の緊迫化を指摘している。

まとめ

アゼルバイジャンが旅客機墜落事件を巡りロシアを国際司法機関に提訴する方針を示したことは、両国間の関係が深刻な局面に入ったことを意味する。ウクライナへの公然たる支持表明や、アルメニアとの和平プロセスにおける米国の役割を評価する姿勢は、アゼルバイジャンの対ロシア戦略の変化を示唆している。この動きは、旧ソ連圏における地政学的バランスに新たな波紋を広げると予測される。


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