務安空港チェジュ航空機事故:パイロットはギア・フラップを操作せず、右エンジンは稼働状態か

昨年12月末に全羅南道務安郡の務安空港で発生し、179人の尊い命が失われたチェジュ航空2216便事故に関して、新たな事実が浮上しました。これまでの分析では、鳥の群れとの衝突による両エンジンの故障と、それに伴うランディングギアシステムの不具合が胴体着陸を招いたとされていました。しかし、最新の調査により、パイロットが着陸時に不可欠なランディングギア(降着装置)や補助翼(フラップ)などを意図的に作動させようとした形跡がないことが確認され、さらに損傷を受けたと思われていた右エンジンも相当なレベルで出力があったことが判明しました。

これまでの事故分析と新たな疑問

事故当初の一般的な分析では、航空機が鳥の群れに衝突した結果、二つのエンジンが損傷し、その影響でランディングギアシステムも故障したため、パイロットが緊急的に胴体着陸を試みたと考えられていました。しかし、本紙の取材と韓国国土交通部(省に相当)の航空鉄道事故調査委員会の調査から、これとは異なる状況が明らかになってきています。事故機の残骸を調査する過程で、操縦席前方にあるランディングギアのレバーが「OFF(オフ)」の位置にあったことが確認されました。もしパイロットがランディングギアを下ろそうとしていたならば、このレバーは「DOWN(下ろす)」に移動しているはずですが、それがなされていませんでした。

未使用だった着陸時の主要装置

さらに驚くべきは、操縦席の椅子のすぐ後方に設置されている、手動でランディングギアを下ろすための別途の装置も全く動かされた形跡がなかったことです。これは、ランディングギアを下ろす試みが一切行われていなかったことを示唆しています。また、ランディングギアだけでなく、航空機の着陸操作に不可欠な補助翼(フラップ)や、着陸後の減速に用いるスピードブレーキのレバーも、作動させた形跡がなかったことが判明しました。通常、航空機は着陸前にランディングギアと補助翼を展開し、着陸後すぐにスピードブレーキが作動するように事前に設定します。これらの操作が全く行われていなかったという事実は、事故の状況に新たな疑問を投げかけています。

務安空港で胴体着陸を試みるチェジュ航空機。降着装置なしで滑走路と接触し、機体下部から火花が散る瞬間を捉えた写真。務安空港で胴体着陸を試みるチェジュ航空機。降着装置なしで滑走路と接触し、機体下部から火花が散る瞬間を捉えた写真。

パイロットの判断に関する二つの可能性

このような状況から、パイロットの行動には大きく分けて二つの可能性が考えられています。一つ目は、当時の状況が極めて緊迫しており、これらの操作を行う時間的、あるいは物理的な余裕がなかった可能性です。油圧システムに深刻な損傷が生じていた場合、操縦そのものが極めて困難であったことも考えられます。二つ目は、パイロットが意図的にこれらの操作を行わなかった可能性です。ある航空業界関係者は、「ランディングギアや補助翼などを展開すると、空気抵抗が増加して速度が落ちます。エンジンが損傷を受けた状態で速度が低下すれば、滑走路まで到達できないとパイロットが懸念し、あえて胴体着陸を試みた可能性も排除できません」と指摘しています。

今後の調査と最終報告

これらの情報は、航空鉄道事故調査委員会による中間調査結果であり、最終的な事故原因の特定には至っていません。今回の新たな発見は、務安空港でのチェジュ航空機事故の全容解明に向けた重要な手掛かりとなります。今後、詳細なフライトレコーダーやボイスレコーダーの解析、機体の損傷状況のさらなる分析が進められ、パイロットの判断や機体の状況に関する疑問が解明されることが期待されます。この事故から得られる教訓は、将来の航空安全対策に大きく貢献することになるでしょう。

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