東京都八王子市の住宅で高校1年、15歳の男子生徒が死亡した。現場となった生徒の自室には拳銃があった。米国製の真正拳銃とみられ、数十発の実弾もみつかった。
警視庁は、生徒の携帯電話の履歴を解析するなどして入手ルートを調べている。拳銃が今や、高校生にさえ身近な存在となっている現実に驚く。
警察庁によると、昨年押収した拳銃401丁のうち324丁を暴力団以外の関係者から押収した。その数は実に、約8割に及んでいる。ネットオークションや掲示板の取引などを端緒としたものは、54丁に上った。
流通させているのは主に、闇サイトやダークウェブと呼ばれるネット上の違法取引である。
売買されているのは拳銃だけではない。麻薬や違法薬物、児童ポルノやリベンジポルノの映像や画像、偽造クレジットカードなど、ありとあらゆる「違法商品」の取引が行われている。
特殊詐欺の受け子など、犯罪グループのリクルートに使用されることもある。平成19年には、闇サイトで集まった男3人が名古屋市の路上で女性会社員を拉致して殺害、岐阜県内の山中に遺棄する事件もあった。
専門家によれば、市販のシステムを利用すれば誰でも闇サイトにアクセスすることは可能なのだという。ネット上にはその方法を教授するサイトも多く散見される。15歳の少年が真正拳銃を入手しても不思議はないのだ。
しかもこうした地下市場による決済の多くは仮想通貨が使用される。仮想通貨は匿名性が高く、摘発を難しくさせている。
ネットの匿名性をめぐっては、テレビ番組への出演で自身への誹謗(ひぼう)中傷が集中したことを苦に、22歳の女子プロレスラーが命を絶った。これを機に「プロバイダー責任制限法」に基づく発信者情報開示の手続きの簡素化や侮辱罪の罰則強化が検討されている。
闇サイトや地下市場についても同様のはずだ。表の商店には登記があり、記録に残る決済がある。拳銃をはじめとする違法な商品が流通している現実を野放しにしていいはずがない。
ネット空間に蔓延(まんえん)する悪意を根絶することは難しい。法整備や緊密な国際連携も必要となる。ただ難しいからといって放置することは許されまい。