米朝会談2年 進まぬ非核化、米に責任転嫁 内情は交渉どころでなく





2018年6月、米朝首脳会談の共同声明の署名式で握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)とトランプ米大統領=シンガポール(ロイター)

 【ソウル=桜井紀雄】シンガポールで開かれた初の米朝首脳会談から2年となる12日、北朝鮮は李善権(リ・ソングォン)外相の談話で「朝米関係での改善は一つもない」と主張した。交渉の頓挫は実質的な非核化措置をしない北朝鮮側に大きな原因があるが、トランプ米政権に一方的に責任転嫁した形だ。新型コロナウイルスへの対応で国内事情を優先せざるを得ない今、本格的な対米交渉どころではないとの本音も垣間見える。

 「シンガポールで握手した手を引き続き握っている必要があるのか」。李氏は談話でこう疑問を呈した。北朝鮮の常套(じょうとう)句といえる対米揺さぶりだ。北東部の核実験場の坑道爆破という“非核化ショー”を見せたのも会談前の2018年5月。最近も弾道ミサイルの試射を繰り返しているのに、米側の「敵視政策」批判に終始している。

 半面、「敵対的な朝米関係に終止符を打ち、協力の時代を開いていこうとの両国人民の願いに違いはない」と述べ、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ大統領の「親交」の維持にも言及。関係を断つ気はないと示唆しつつ、交渉条件や期限には踏み込まなかった。

 韓国の脱北者による正恩氏を批判するビラの散布を問題視して、韓国を「敵」とみなし、非難キャンペーンを国内で繰り広げているのとは大きな差がある。

 北朝鮮による韓国との通信遮断に米政府が「失望」を表明したことについて、北朝鮮外務省局長は11日、米国が干渉しない方が「大統領選を無難に行うのにも有益だ」とクギを刺した。11月に大統領選を控えるトランプ氏が国内でのデモにより、北朝鮮との核交渉どころではないと見越していることがうかがえる。

 正恩氏の妹、金与正(ヨジョン)党第1副部長は現在、対韓強硬策を指揮しているが、トランプ氏に関しては3月、正恩氏に送られた親書を紹介して首脳間の親交の厚さを強調しつつ、両国関係改善は「時間に任せて見守るべきだ」と述べていた。

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