「われわれは2年前と変わった」 北が核・ミサイル増強を予告 米朝会談2年





朝鮮労働党中央軍事委員会拡大会議に出席した金正恩党委員長。朝鮮中央通信が5月24日配信した(朝鮮中央通信=共同)

 世界の耳目を集めた初の米朝首脳会談から2年が経過した。この間、期待された非核化措置は何一つ進まず、北朝鮮の李善権(リ・ソングォン)外相は、「朝米関係での改善は一つもない」と主張した。皮肉にも「進展」したといえるのは、日本や韓国を狙った北朝鮮のミサイル技術だ。トランプ米大統領の「黙認」と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の迎合は日米韓の安全保障にひずみを生じさせた。

 「われわれは2年前と大きく変わり、激しく変わり続ける」。北朝鮮外務省のクォン・ジョングン米国担当局長は13日、こう主張し、「米国の脅威を制圧するため、力を養い続けている」と強調した。非核化の努力に言及した韓国政府高官への反論の形を取ってトランプ政権への直接非難は避けつつも、米国に対し、核・ミサイル戦力の増強を宣言したに等しい。

 朝鮮労働党統一戦線部トップも12日深夜、「今後の時間は、南朝鮮(韓国)当局にとって悔やまれ、苦しいものになるだろう」と警告した。金正恩(キム・ジョンウン)党委員長を非難するビラへの対応にかこつけて「信頼より疑惑が上回る」と韓国を批判し、軍事的挑発を含む報復を示唆したものだが、背後に控える米軍の動向を意識していることは明らかだ。

 昨年2月のベトナムでの米朝首脳再会談の物別れ以降、北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって「信頼より疑惑」が上回ってきた。

 北朝鮮は昨年5月以降、ロシア製に似たタイプや「超大型放射砲(多連装ロケット砲)」と称するものなど、短距離弾道ミサイルを最近まで実に16回発射。特異な軌道などからいずれも迎撃が困難な新型で、在韓米軍への脅威が格段に高まったことを意味する。

 昨年10月には、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を試射。最近はSLBMを搭載するためとみられる新型潜水艦の進水に向けた動きが捕捉されている。潜水艦が実戦配備されれば、海中からの奇襲発射が可能となり、日本だけでなく、太平洋地域の米軍にとって大きな脅威となる。

 北朝鮮がミサイル発射を繰り返してきたのは、米本土を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)以外の短中距離ミサイルの試射を問題視してこなかったトランプ氏の態度が大きく作用しているとみられている。

 SLBMを試射したときでさえ、トランプ氏は「様子を見てみよう。彼らは対話したがっている」と述べ、半ば黙認した。“免罪符”を与えた形だ。

 北東アジアの安保環境の悪化に拍車をかけているのは、北朝鮮への迎合を貫く文政権の姿勢だ。ビラ散布を計画する脱北者への容赦ない取り締まりを通告。昨夏には、日米韓の対北安保協力を支える日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄に動いた。 結局破棄はせず、延長をしたものの、破棄を求める声はいまだにくすぶっている。(ソウル 桜井紀雄)



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