【主張】性犯罪の防止 GPS装着の義務化急げ


 性犯罪や性暴力は、立場や力の違いを利用して相手をおとしめる卑劣な行為である。

 政府は性犯罪・性暴力対策を強化する初の方針を関係府省会議で決定した。方針には、仮釈放と執行猶予中の性犯罪者を対象に衛星利用測位システム(GPS)端末の装着義務化を検討すると明記した。2年をめどに、各国の法制度や運用を把握する。

 関係府省会議の議長を務める橋本聖子男女共同参画担当相は「被害の深刻さを正面から受け止め、性暴力をなくしていくという政府の決意だ」と述べた。悲痛な事件を減らすため、着実な実施を急いでほしい。

 GPSの装着は米国の多くの州が性犯罪の常習者を対象にシステムを導入し、成果を挙げている。韓国や英国、ドイツでも特定の前歴者に装着を義務付けている。監視されることで対象者が自分の意思で行動を制御する効果も報告されている。

 国内でも宮城県や大阪府が性犯罪前歴者などを対象とするGPSの携帯を義務づける条例を検討したことがあるが、人権侵害や監視社会につながるといった反対があり、制定には至らなかった。

 だが悲惨な事件はもうたくさんだ。少しでも効果が望めるなら導入を躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。真に守られるべきは未来の被害者の人権である。犯罪の抑止は対象者の更生にも寄与が期待できる。政府の重い腰をあげさせたのは被害当事者らのひたむきな活動である。再犯防止を叫びながら対策に反対するのでは無関心と変わらない。

 方針には被害者支援の充実や、子供にわいせつ行為をした教員らへの対応強化も盛り込まれた。教員のわいせつ行為は原則懲戒免職を徹底する。失効した教員免状は3年で再取得できるが厳格化を検討する。保育士も同様だ。

 事件の7、8割は顔見知りによるとの調査結果がある。信頼する相手からの性暴力が、どれほど被害者の心を傷つけるか。当事者が被害を訴え出られないことに乗じて行為が継続する環境を変えなくてはならない。

 被害の潜在化を防ぐことも重要だ。自治体の中には総合支援のための「ワンストップ支援センター」を医療機関に置き、被害時の証拠保全や後の訴訟支援にあたるところもある。こうした取り組みを広げていきたい。



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