新型コロナウイルスの感染拡大は、味わいのある芸と独特の空気感で楽しませる落語の寄席にも影響を及ぼしている。東京都内の寄席では、客席を減らすなどさまざまな「3密」防止策が講じられ、インターネットによる落語の有料配信に乗り出す構想も。日本の伝統的な話芸に変化の波が押し寄せているようだ。(佐藤侑希)
■「生の落語が一番」
東京都台東区浅草にある浅草演芸ホール。15日、営業再開から半月が経過し、多くの常連客の姿が戻りつつあった。1日の再開当日(昼の部)の観客数は35人だったが、この日は80人に。多くがコロナ禍の以前から通っていた常連客だ。
千葉県市原市から訪れた常連客の大岩りょうさん(65)は「休業中はオンラインでも落語を見ていたが、生の落語が一番いい。生活の一部を取り戻せた」と話した。
高座に上がった桃月庵こはくさん(32)は「このような情勢にもかかわらず、お客さんに来ていただきありがたい。これからも一緒に盛り上げていきたい」と喜びを語った。
1年を通して開かれる同ホールは都からの営業自粛要請を受け、4月初めから休業。休業要請緩和の第2段階「ステップ2」に1日から移行し、演芸場や劇場などの休業要請が緩和されたことを受けて再開した。
新型コロナの感染防止対策として、観客にマスクの着用を呼び掛けているほか、入り口で検温、手のアルコール消毒をする▽客席全340席のうち240席を使用禁止にして間隔を空ける▽館内の換気のため、仲入り(休憩時間)も通常より多く取る-といった取り組みが行われている。