日本銀行は、政府が令和2年度の第2次補正予算で決めた実質無利子・無担保融資の拡充に合わせ、金融機関への新しい資金供給策を拡大する。政府と足並みをそろえる格好で企業の資金繰り支援を強化するが、迅速な融資拡大につなげられるかが課題となる。新型コロナウイルス感染拡大の“第2波”によって危機対応の長期化も懸念され、日銀が追加対策を迫られる可能性もある。
「企業の資金繰りには強いストレスがかかっている」。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は16日の金融政策決定会合後の記者会見で、政府が拡充した資金繰り支援と連動して資金供給策を拡大する意義を強調した。
新型コロナ感染拡大に伴う外出自粛などで、企業の資金繰りは逼迫(ひっぱく)。日銀によれば5月の銀行と信用金庫を合わせた貸出残高は、前年同月比で4・8%増と伸び率は過去最高となった。6月24日に始まる予定の新しい資金供給策で、こうした企業への貸し出しをさらに後押しする狙いだ。
ただ、融資で一時的に資金繰りを支えられても、新型コロナの問題が長期化すれば、どこまで企業の倒産防止や雇用維持につなげられるかは不透明だ。
融資は企業の債務として算定されるため、企業の借り入れが増えれば財務の健全性が損なわれる。日銀の新制度で実際に融資する銀行側は「資金調達は有利になるが、(融資回収できなくなる)与信リスクはなくならない」(大手銀幹部)と説明する。審査が緩んでいるわけではなく、企業の財務悪化で融資が実行できにくくなる恐れもある。
黒田総裁は「今年後半には感染拡大の影響が和らぐ」と想定する一方、「(感染拡大の)第2波の可能性はゼロではない」とも述べ、対応が長引き、対策を拡充する可能性も示唆した。具体的な追加策では企業の資金繰り支援の拡充や、長短金利の誘導目標の引き下げなどの可能性に言及した。