【ワシントン=塩原永久】米グーグルなどの巨大IT企業に対するデジタル課税の国際交渉について、トランプ米政権が17日までに、「協議に進展がない」として協議を中断するよう欧州主要国に申し入れた。米国はデジタル課税が米企業を不当に狙い撃ちにするものだと反発しており、対抗関税も辞さない構えだ。関係国の摩擦が深まれば、年内合意を目指す交渉の機運がそがれる恐れがある。
ライトハイザー米通商代表が17日の議会証言で、米政府が国際交渉からすでに離脱したと認めた。担当するムニューシン米財務長官が「(国際)交渉にこれ以上関与しない」方針を決めたという。
ライトハイザー氏は、デジタル課税が「米国を不当に扱い、米企業に負担を課す」ものだと批判。独自に課税を導入した欧州各国や新興国に対抗し、USTRが調査している制裁関税の発動を、米国は躊(ちゅう)躇(ちょ)しないとの認識を示した。
デジタル課税の制度設計は、経済協力開発機構(OECD)が中心となり、年内合意に向けて協議を進めている。英紙フィナンシャル・タイムズは17日、ムニューシン氏が欧州4カ国の財務相らに、協議の延期を通告する書簡を12日付で送付したと報じた。書簡でムニューシン氏は、国際交渉が「行き詰まった」との認識を示しているという。
ただ、米政府は「(交渉の)余地は明らかにある」(ライトハイザー氏)としており、デジタル課税の国際合意の先送りを狙って関係国への揺さぶりを強めている可能性もある。