日本漫画の表現に革新をもたらした傑作や、隠れた名作を紹介する作品集。
ほぼサイレントで、極端に縦長のコマ割りが印象的な石ノ森章太郎「ジュン」。夢の世界を異様な表現力で描き出したつげ義春「ねじ式」。日本初の「実物大漫画」に挑戦した赤塚不二夫「天才バカボン」…。まさに芸術と呼ぶにふさわしく、その技法と冒険的発想には改めてうならされる。一方で、漫画好きでも初めて読むであろう作品も収録。読み応え十分だ。
編者は漫画評論の第一人者のひとり。日本漫画の歴史を振り返るうえで、極めて意義深い作品集である。(中条省平編、ちくま文庫・800円+税)