高市早苗氏が10月21日に首相に選出され、同日中に発足した新内閣で、高市首相は全閣僚に対し「指示書」と題された異例の文書を配布しました。これは高市内閣の目指す政策方針を具体的に示した38ページにわたる詳細な内容で、特に労働時間規制の緩和に関する指示が、今後の「働き方改革」に大きな影響を与える可能性があり、各方面で波紋を呼んでいます。
高市早苗首相と閣僚たち、新内閣発足時の記念撮影
異例の「指示書」が示す高市内閣の方針
今回閣僚に配布された「指示書」は、過去に大臣経験のある自民党関係者A氏が「見たことがない」と語るほど、内閣発足日に文書で詳細な指示が出されるのは極めて異例とされています。この文書には、表紙に目次があり、最初の「全閣僚共通指示」のページには、高市首相の掲げる基本方針が明記されています。その中心には、「今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。世界が直面する課題に向き合い、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」という理念があり、「強い経済の実現」「地方を伸ばし、暮らしを守る」「外交力と防衛力の強化」の3つの柱が据えられています。
労働時間規制緩和の検討を指示:働き方改革への影響
指示書の中でも特に注目されているのが、厚生労働大臣宛の項目です。そこには「心身の健康維持と従業者の選択を前提にした労働時間規制の緩和の検討を行う」と記されており、高市首相が上野賢一郎厚生労働大臣に対し、直接残業の上限規制緩和を検討するよう指示したことも報じられています。近年、過労死問題などを背景に労働時間の上限規制が導入され、国民のワーク・ライフ・バランス向上を目指す「働き方改革」が進められてきましたが、今回の指示は、その規制を緩和する方向性を示唆するものです。経済界からは人手不足などを理由に規制緩和を求める声が上がっており、この指示はそのような背景を受けたものと考えられます。
「馬車馬のように働く」発言と国民への影響
高市首相は自民党総裁選での勝利時、「馬車馬のように働いてもらう」と党議員に伝え、「自分自身、ワーク・ライフ・バランスという言葉を捨て、働いて、働いて、働いて、働いて、働いて参ります」と宣言し、ネット上で賛否両論を巻き起こしました。今回の指示内容からは、首相や議員だけでなく、国民にも「もっと働いてもらう」ことを求めているかのような姿勢がうかがえます。厚生労働省の幹部からは、「総裁就任直後の発言があっただけに、今回の指示は長時間労働を推進するようにもとられかねない」との懸念が表明されています。また、立憲民主党の代表代行である吉田晴美衆院議員はSNSで、「実質的な残業し放題解禁となるのか? そうだとすれば、全く誤った方向に向かっている」と指摘し、批判の声を上げています。
結論
高市新内閣が閣僚に配布した「指示書」は、異例の形式と内容で政権の強い経済成長への意欲を示しています。特に労働時間規制の緩和を検討する指示は、「働き方改革」の進展に逆行する可能性があり、国民の労働環境やワーク・ライフ・バランスに大きな影響を与えるとして、今後の動向が注目されます。





