【パリ=三井美奈】フォンデアライエン欧州委員長は22日、欧州連合(EU)と中国の習近平国家主席らとの首脳会談後に記者会見し、中国からのサイバー攻撃を批判した。環境問題や貿易では、中国を「極めて重要なパートナー」と位置付け、米国とは異なる対中姿勢を鮮明にした。
フォンデアライエン氏は、病院コンピューターへのサイバー攻撃や偽ニュースの流布に触れ、「出元は分かっている。(中国側に)容認できないと伝えた」と述べた。
香港問題をめぐり、中国が「香港国家安全維持法」導入を決めたことについて同氏は「重大な懸念」を表明し、先進7カ国(G7)と連携して対応する方針を示した。「EUにとって、人権と基本的自由は交渉の余地がない問題」と訴えたが、対中制裁には言及しなかった。
一方、地球温暖化対策のパリ協定では、「中国を頼りにしている」と発言。EUが中国と7年前から交渉を続ける投資協定についても、年内締結を目指す方針を確認した。そのうえで、中国が自国企業に補助金を支給し、EU投資を促している問題で是正を求め、「国家補助金のあり方を透明化すべきだ」と述べた。
EUに対しては、米国のポンペオ国務長官が19日、デンマークで開かれた外交フォーラムで対中政策で同調を求め、「自由か専制かの選択だ」と迫っていた。
だが、EUは香港問題で米国と懸念を共有しながら、中国に対する強硬姿勢とは距離を置いた。