【主張】朝鮮戦争70年 厳しい現実を再認識せよ 北の好戦性は今も変わらない


 朝鮮戦争が始まってから25日で70年を迎えた。

 ソ連が貸与した戦車をそろえた北朝鮮軍が1950年6月25日未明の奇襲攻撃で、韓国への南侵を始めたことで戦端が開かれた。

 米軍主力の国連軍が韓国側で、義勇軍と称した中国人民解放軍が北朝鮮側で参戦した。ソ連軍パイロットが隠れて北朝鮮機を操った。53年7月27日の休戦協定締結までの犠牲者は、軍民合わせて数百万人にも及んだ。

 この悲惨な戦争を考える際に重要なのは、侵略者は北朝鮮だという点と、歴史のかなたに消えた戦いではないという点だ。

 ≪南北融和は幻想だった≫

 双方は休戦中にすぎない。軍事境界線(38度線)を挟み、米軍主体の国連軍、韓国軍、北朝鮮軍合わせて100万人以上の大軍が今もにらみ合っている。

 北朝鮮は国連安全保障理事会の決議を無視して、核兵器とミサイル戦力の増強にも走っている。

 「朝鮮戦争」は70年間にわたって北東アジアの安定を脅かし、日本の安全保障を脅かしている。この厳しい現実を踏まえ、日本は平和を追求しなくてはならない。今の38度線の緊張は人ごとではないのである。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は24日、軍が立案した韓国に対する軍事行動計画を保留すると表明した。計画とは、非武装地帯(DMZ)から一部撤去した監視所の復活、軍事境界線付近での演習再開などである。

 最近の北朝鮮は、脱北者団体による金委員長批判のビラ散布を非難して、韓国への挑発行為を重ねてきた。16日には南北融和の象徴とされてきた開城の南北共同連絡事務所を爆破した。

 北朝鮮の独裁者は3代目になったが、朝鮮半島の「赤化統一」を国是とする好戦性は変わらない。金委員長の保留表明にしても、軍事的脅しを出したり引っ込めたりして相手を翻弄し、制裁緩和などの要求を受け入れさせたいという身勝手さを示している。

 文在寅韓国大統領は、朝鮮戦争の際に南側へ逃れてきた「失郷民」を両親に持つ。その文大統領は、北朝鮮の危険性を認識せず、地域の平和よりも南北融和を追求してきた。

 2018年4月に文大統領と金委員長は板門店で会談し、「朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれた」と宣言した。だが、朝鮮戦争は休戦のままで、平和条約を結べる状態ではない。文大統領の南北融和が幻想だったことは、最近の緊張が証明している。北朝鮮に利用されていることに気づくべきだ。

 そもそも朝鮮戦争は金委員長の祖父で独裁者の金日成が、ソ連のスターリン、中国の毛沢東の支持の下、韓国を武力で倒そうという野望を抱いたことで始まった。

 ≪中露両国の後ろ盾なお≫

 スターリンは1950年3~4月にモスクワを訪問した金日成に、中国の支援を得ることを条件に韓国侵攻を認めた。金日成は5月の北京訪問で、毛沢東から南侵への援助の約束を取り付けた。

 共産圏の3人の独裁者が、侵略戦争の連絡を秘密裏に取り合っていたのである。

 北朝鮮は当初優勢だったが、仁川上陸作戦による米軍主力の国連軍の反撃で、中朝国境付近に追い詰められた。そこへ毛沢東が100万の大軍を投入して人海戦術で押し返し、現在の軍事境界線で休戦となった。

 休戦後、北朝鮮は、米韓同盟の下で日本の支援を得て経済発展を果たした韓国との体制間競争に敗れ、大きな経済格差に甘んじるようになった。

 それでも北朝鮮が独裁体制を保ち、日本まで核ミサイルの射程内に収めるようになったのは、中国とソ連・ロシアが後ろ盾となってきたことが大きい。中露両国は、核・ミサイル問題でも北朝鮮への制裁緩和を唱えている。

 だが、日米韓の3カ国が緊密に連携すれば北朝鮮は付け入る隙を容易には見つけられまい。日米韓は、核・ミサイル戦力保持の断念を迫らなくてはならない。

 文大統領は外交上の失敗を反省し、米韓同盟強化や日本との連携に舵(かじ)を切ってもらいたい。ありもしない歴史問題で日本を攻撃するのは北朝鮮を喜ばせるだけだ。朝鮮戦争の南侵以来、北朝鮮が韓国を執拗(しつよう)に攻撃し続けてきた歴史こそ直視すべきである。



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