ソフトバンクグループ(SBG)は25日、東京都港区の本社ビルで定時株主総会を開いた。総会で孫正義会長兼社長は財務改善策として進めている最大4兆5千億円分の資産売却について8割を終えたとし、残り2割も「私の腹の中ではめどが立っている」と述べた。また、投資先の株価が回復したことで保有資産も増加。5月に行われた決算会見時からは一変した晴れやかな表情で、強気の“孫節”が戻ってきた。
「データ情報革命は何が起きても変わらず伸びていく。業績への自信は深まった」。総会で孫氏はこう力強く語った。
SBGは新型コロナの影響による株価下落などにより、令和2年3月期連結決算で最終損益が9615億円の赤字に転落。昨年12月時点で約29兆円あった資産は今年3月末には約1兆円目減りした。しかしその後の世界的な株価回復で投資先企業の株価も上昇しており、6月24日時点の資産はコロナ前の水準を超える30兆円に達している。
SBGの投資先は人工知能(AI)などに強みをもつ新興企業。コロナ後はネット通販やテレビ会議など、ITを活用した新しい日常の定着が見込まれており、株価の戻りも他の銘柄と比べて早かった。
それだけに今回の株主総会での孫氏の表情は明るい。決算発表時に神妙な顔をしていたことについては「新型コロナで世界の多くの人が苦しんでいるのを嘆き悲しんでいたからだ」と振り返る余裕をみせた。
理化学研究所の新型スーパーコンピューター「富(ふ)岳(がく)」がスパコンの性能を競う世界ランキングで首位となったことも、SBGにとっては大きなプラス材料となる。富岳の心臓部の中央演算処理装置(CPU)には、傘下の英半導体開発大手アーム・ホールディングスの製品が使われているからだ。アームの製品は米アマゾンのサーバーにも採用されているといい、アームの価値は「来年、再来年と一気に加速して伸びると確信している」とした。
株主からの質問にも強気の発言で応酬。巨額の損失を出した米シェアオフィス大手のウィーカンパニーへの投資の責任を問われると「反対を押し切ってやった私に最大の責任がある。報酬は減俸したうえで、全額寄付しておりSBGからの報酬はゼロだ」と弁明。約10兆円を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が投資する88社の今後については「成功しそうな15社は見えてきた」と述べた。
配当が低いとの指摘には「当分配当なんて期待しないでほしい。同じ株主還元として自社株買いを2・5兆円発表した」と説明。役員報酬が高すぎるという声には「これからも大いに払っていきたい。日本は逆に少なすぎる。総サラリーマン化して大企業がどんどん力を失っている。リスクを取りに行った幹部には、成果が出たときに分配する」と持論を展開した。
総会の最後には25日付で中国のIT大手アリババグループの取締役を退任したことも明らかにした。