【シンガポール=森浩】インド北部カシミール地方の係争地で中国軍とインド軍が衝突した問題をめぐり、中国軍が衝突現場付近に野営地などの建造物を設置したことが26日までに明らかになった。衝突後にも整備を進めているもようだ。双方は対話による対立解決を目指すことで合意したが、中国は軍の配備やインフラ整備を継続しており、両大国の対立は深刻さを増している。
ロイター通信が15日に衝突が起きたガルワン渓谷を撮影した衛星写真の分析結果として伝えた。22日に撮影された写真によると、テントや屋根付きの建物、建設中の野営地が確認できるが、1カ月前には存在していなかったという。ロイター通信は専門家の話として、「このような状況を見る限り、緊張が緩む兆候はほとんどない」と伝えている。
インドメディアによると、両国の事実上の国境である実効支配線(LAC)付近には中国兵が1万人以上配備されているという。中国の無人機がインド側の上空で確認されたとの情報もあり、中国側は軍の展開を緩めていないことがうかがえる。インドもガルワン渓谷に中国軍による建造物があることを認めており、兵士を増派するなどの対応に出ている。
衝突後、中国の王毅(おうき)国務委員兼外相とインドのジャイシャンカル外相は17日の電話会談で、対話を通じて「国境地域の平和と安寧を守る」ことで一致。22日にも両軍の代表による協議が行われたが、両軍による対峙(たいじ)は継続中だ。
中国軍の早期撤退を求めるインド外務省は25日の声明で「問題の中心にあるのは5月上旬以来、中国が実効支配線に沿って軍隊を配備したことだ。衝突を引き起こしたのは中国の行動にある」と非難した。