昨年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で、公選法違反容疑で逮捕された前法相の衆院議員、河井克行容疑者(57)が、現金を雑誌記事に挟むなどして後援会関係者に渡していた疑いのあることが28日、関係者への取材で分かった。広島市議に受領を拒否され、その市議の後援会長に渡したケースもあり、確実に現金を受領させるため、巧妙な手口で配布しようとしたとみられる。
克行容疑者は昨年5月、後援会員の男性宅を訪れ、「(参院選は)激戦だからこのコピーを読んでくれ」と2つ折りにした参院選の記事のコピーを男性に渡した。すぐに「次があるから」と立ち去ったが、男性がコピーを開くと中に現金5万円が挟まれていたという。
男性によると、自民党が野党だった平成24年の衆院選当時、克行容疑者から現金を渡されそうになって拒んだことがあったという。男性は現金をコピーに挟んだ手法を「また拒否されると思ったんだろう」と憤る。5万円は昨年6月に克行容疑者と面会した際に返却したとしている。
また、ある広島市議が昨年4月の統一地方選で当選後、克行容疑者は現金の入った封筒を市議に渡そうとしたが、「(妻の)案里容疑者の票の取りまとめの依頼だ」と思った市議に拒まれたという。その後、市議の後援会長で自身の後援会関係者でもある男性宅を訪問。「当選おめでとう」と白い封筒を渡した。
男性は当選祝い名目と考え、「市議に渡すのが筋だ」と思いながら封筒を受け取った。市議に相談すると「すぐ返せ」と指示があったが、克行容疑者がかたくなに返却を拒んだため、持ち帰って封筒のまま保管。その後、事情聴取を担当した検事らと一緒に封筒の中身を確認すると、30万円が入っていたという。
克行容疑者らの現金配布先とされる94人のうち、後援会関係者の受領額は多くが5万~10万円で、克行容疑者が市議に渡そうとした30万円をそのまま男性に提供した可能性がある。