【世界のかたち、日本のかたち】大阪大教授・坂元一哉 成熟する日米同盟





トランプ米大統領(左)との首脳会談の冒頭、握手を交わす安倍晋三首相=令和元年6月28日午前8時38分、大阪市住之江区のインテックス大阪(代表撮影)

 新型ウイルスとの戦いが続くなか、米中対立が厳しさを増している。先月、米国の新聞記者がそのことに関し、安倍晋三首相に「日本は[米中]どっち側につくのか」と質問した。首相は、いまは世界中が協力してパンデミックに対応すべきときと断ったうえで、こう答えた。

 「日本の外交、安全保障の基本的な立場としては、米国は日本にとって唯一の同盟国でありますから、日本は同盟国として、また、自由や民主主義や基本的人権、法の支配といった基本的な価値を共有する同盟国として、米国と協力をしながら、様々(さまざま)な国際的な課題に取り組んでいきたい」(5月25日)

 米中の対立について問われ、こうした端的な答えが、とくに気負いもなく、即座に首相の口から出てくる。われわれはそこに、安保条約の改定から今年で60年になる日米同盟の成熟を見ることができる。

 朝鮮戦争勃発の翌年、1951(昭和26)年の9月、サンフランシスコ平和条約とともに締結された日米安全保障条約は、講和独立後の日本が、米国主導の自由主義陣営の一員として国際社会に復帰することを明確にする条約だった。朝鮮戦争が続くなか、米国は講和後も日本に米軍基地を置き続けることを求め、日本は米軍基地が講和後の日本の安全に役立ち、また米国の安全にも役立つとの前提でそれを受け入れた。

 この日米間の安全保障協力は、それから70年近くも続いている。その維持が、敵から友に立場が変わった両国の国益に合致するからに他ならない。

 ただ安保条約は、講和後の暫定的な措置として生まれたものであり、その条文は日本政府が求めたような、「平等の協同者(イコール・パートナー)」としての安全保障協力にふさわしいものではなかった。「互いの安全のため」に「互いに協力する」義務を負う同盟条約の形式を欠いていたからである。

 安保改定の理由はそこにあった。改定後の新安保条約(現行安保条約)では、日米がともに関心を持つ「極東」の平和と安全のために、日本は米国に基地を貸し(6条)、また在日米軍を守る(5条)義務を負う。これに対し米国は日本の安全を守る義務を負う(5条)ことが明確になった。新条約にはまた、日米が政治経済的にも、自由世界の発展に協力する趣旨の条文が加わった(2条)。

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