リニア中央新幹線工事の静岡工区のトンネル掘削に先立つ準備工事をめぐり、静岡県は3日、早期着手の可否を問い合わせていたJR東海に対し「トンネル入り口の整備などはトンネル掘削工事として協定を締結する必要がある」とする文書を提出し、現時点では認められないと正式に回答した。県は大井川の水量減などを理由に本体工事に同意していない。これにより当分の間、県の着工同意が得られないことが確定し、同社が目指す東京・品川-名古屋間の令和9年の開業予定は延期が不可避となった。
JR東海は同日、「回答は受け取りました。現在、(内容を)確認中です」とし、同社が今後、開業延期や建設計画見直しを決断するかどうかが焦点になる。
リニア静岡工区をめぐって、同社は各ヤードで資材置き場や濁水処理設備の設置といった準備工事に6月中に着手できなければ、令和9年の開業は困難だと主張していた。このため、同社は6月29日、県に対してヤード整備工事の可否と、その理由を書面で回答するよう申し入れた。同社は「ヤード整備に今月(6月)中に着手できるか否かは、開業が(9年に)間に合うか否かにかかわる極めて重要な意味を持つ」と切迫感を示し、今月3日までの回答を求めていた。
しかし、県はこの日、同社に提出した正式回答で「ヤード整備はトンネル掘削工事の一部といえる」ため、着工には同県との協定締結が必要だと指摘。そのうえで「現時点では県としては協定を締結する状態に至っていないと判断している」と記し、同社が着工を希望する準備工事は認められないと結論付けた。
同県の川勝平太知事は6月26日に行われた同社の金子慎社長とのトップ会談で、準備工事着手の可否について明言を避けた。ところが、会談終了後に記者団に「本体工事に関わるものだから一切認められない」と明言したため、同社が改めて書面での回答を求めていた。