【主張】あおり運転 厳罰化を根絶への契機に


 あおり運転の厳罰化を盛り込んだ改正道交法が6月30日に、危険運転の適用範囲を拡大させた改正自動車運転処罰法も7月2日に施行された。

 警察庁の松本光弘長官は2日の会見で「新設された罰則を周知して抑止を図り、違反行為には厳正な取り締まりをしていく」と述べた。

 改正道交法では、あおり運転を「妨害運転」と規定し、他の車の通行を妨げる目的での車間距離不保持、急な車線変更、幅寄せ・蛇行など10行為を対象とした。罰則は5年以下の懲役、または100万円以下の罰金となる。

 自転車のあおり運転も「危険行為」と規定され、3年以内に2回違反した14歳以上は安全講習が義務付けられ、受講しないと5万円以下の罰金が科される。

 改正自動車運転処罰法は「危険運転」の類型に、衝突すれば重大事故となるような速度で走行中の車の前に妨害目的で停止する行為や、高速道路などで走行中の車の前でその車を停止・徐行させる行為を追加した。最高刑は死亡事故で懲役20年となる。

 法改正のきっかけは平成29年、東名高速道路で前方をふさがれたワゴン車が後続車に追突され、夫婦が死亡した事故だった。加害者側の車が速度0である停車行為は「危険運転」として認められず、法の盲点が指摘されていた。

 改正の趣旨は、厳罰化により危険なあおり行為を抑止することである。そのためには改正法の周知を徹底し、摘発の実績を積むことだ。摘発には客観的証拠が不可欠であり、ドライブレコーダーの映像・音声が有効である。

 国土交通省が昨年11月に行った調査では、ドラレコの搭載率は45.9%と半分に届かなかった。特に70代以上の高齢者は38.8%と4割以下だった。

 ドラレコは、あおり運転などの摘発に有効なだけではなく、搭載の明示に抑止効果も期待できる。理想は全車両への搭載だ。

 自治体によっては、ドラレコの購入に補助金を出しているところもある。法改正による厳罰化を機に、搭載率を上げる工夫を国や自治体、自動車業界に求めたい。

 法改正の原動力は悲惨な事故の遺族の悲しみ、怒りだった。自動車も自転車も便利な乗り物だが、運転者は被害者にも加害者にもなり得る。改正を、あおり運転根絶への契機としたい。



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