台湾、中国のアフリカ制覇牽制 ソマリランドに事務所設置で攻勢 グアムにも





台湾総統の就任式で演説する蔡英文総統=5月20日、台北(中央通信社=共同)

 【台北=矢板明夫】台湾の蔡英文政権がアフリカ東部の半独立状態のソマリランドに代表機構を設置し、米領グアムにおける弁事処(領事館に相当)を再開させるなど積極外交を展開している。中国の圧力により国際社会で厳しい状況に立たされる中、反転攻勢につなげたい狙いとみられる。

 台湾の呉●(=刊の干を金に)燮(ご・しょうしょう)外交部長(外相)は1日、ソマリランドと公式の代表機構の相互設置で合意したことを発表した。ソマリランドはソマリアの北部にある旧英領で、1991年にソマリアからの分離独立を宣言し、実質的に独立国家として機能しているが、国際社会からは承認されていない。一方で台湾とは留学生の受け入れや海上の安全保障、医療衛生、教育などの分野で連携してきた。

 台湾の外交部(外務省)は代表機構の設置について「台湾は国際社会において厳しい境遇にあるが、それで萎縮することはない。引き続き、理念の近い国々との実質的な関係強化に努める」と説明している。

 台湾がアフリカで外交関係を維持するのは現在、南部のエスワティニ(旧スワジランド)のみ。中国はそのエスワティニにも巨大経済圏構想「一帯一路」に伴うインフラ整備支援を武器に国交樹立を求めている。台湾にはソマリランドとの関係強化で、中国の「アフリカ制覇」の動きにくさびを打ち、アフリカでの影響力を少しでも高めたいとの思惑があるとみられる。

 台湾とソマリランドは正式な外交関係を締結していないため、ソマリランドにある代表機構の名前は台湾が公称する「中華民国」を使わず「台湾代表処」となった。双方の関係強化について、中国政府は非難声明を出すなど反発し、ソマリランドの独立を認めていないソマリア政府も「台湾による主権と領土保全の侵害だ」と批判している。

 台湾の外交部はまた、「駐グアム台北経済文化弁事処」の再開を3日に発表した。同弁事処は2017年8月に経費削減を理由に閉鎖されたばかりだった。再開の理由について同部は「予算の増加と対米関係の深化、太平洋の戦略的地位の重要性を踏まえての対応だ」と説明している。

 台湾の外交評論家は「閉鎖からわずか3年で再開するのは珍しい。米国から要請された可能性が高い」と分析した上で、「グアムは太平洋における米軍の重要な拠点であり、今後、米軍の軍事演習に台湾軍が参加する可能性がある」との見方を示した。



Source link