【主張】米高官の日韓訪問 文政権は親北やめぬのか


 米政府の北朝鮮担当特別代表を務めるビーガン国務副長官が韓国、日本を訪れ、それぞれの関係閣僚、高官らと北朝鮮への対応を協議した。

 北朝鮮は先月、韓国への敵対姿勢をあらわにし、南北共同連絡事務所を爆破した。だが、開城、金剛山地区への部隊展開などの軍事行動計画は唐突に、「保留」している。

 一連の挑発行為で、北朝鮮が何を意図し、その背後にどんな事情があるのか。日米韓が認識を共有することが欠かせない。

 コロナ禍でのさまざまな制約の中、ビーガン氏が日韓訪問を実現させ、意思疎通を図ったことに意味がある。日本は入国拒否対象国から初めて要人を受け入れた。

 北朝鮮の意図として明白なのは、2018年の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談以降の「南北融和」を完全に拒絶したということだ。

 南北首脳会談での合意に基づき開城に設置された共同連絡事務所は、融和の象徴だった。予告後の無残な爆破は、文政権にとって屈辱的な出来事であるはずだ。

 これを、北朝鮮の不満の表明と受け止め、何が不満で解消のため何をしてやれるかと考えるのは間違っている。危険な挑発に褒美を与えてはならない。

 文政権の対北姿勢が一向に改まらないことは大きな懸念である。文氏は先ごろ、情報機関トップなどの人事を刷新したが、これまで以上に融和姿勢が鮮明だ。

 統一相に指名された李仁栄氏は、北朝鮮への人道支援などを急ぐ意向を示している。

 ビーガン氏の訪韓の目的の一つは、文政権の融和への固執にクギをさすことだったのだろう。

 首脳会談での合意に基づく南北融和は、北朝鮮の非核化の実現が大前提だ。非核化抜きに対北制裁の緩和はなく、制裁がある限り、経済協力は不可能だからだ。

 人事刷新などで、南北対話を模索するより、もっと重要なのは、非核化への努力である。そのためには日米との連携が不可欠だ。南北融和のみを追求すれば、連携を揺るがし、北朝鮮の核の脅威は増大するだけだ。

 北朝鮮が行き詰まった米朝交渉についてどう考えているのか。コロナ禍でどれほどの打撃を受けているのか。日米韓は共通の認識のもと、一致して行動しなければならない。



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