12日投開票の鹿児島県知事選で、自民、公明両党は推薦した現職、三反園訓氏が無所属の保守系新人に敗れ、前回の平成28年知事選に続く連敗を喫した。与党は前回、三反園氏の対立候補を支えただけに、分かりづらい構図が保守層の離反を招いたといえる。一方の野党も対応が割れて対立軸を示すことができなかった。今回は有権者が政党全体に不信感を募らせた結果との見方もある。
「大変残念なことだ」
安倍晋三首相(自民党総裁)は13日、記者団に知事選敗北をこう総括したうえで、「自民党としては是々非々で県民のために協力していきたい」と述べた。
三反園氏は前回、「脱原発」を主張して当選しながら、自民に支えられた今回は具体的な態度表明を避けてきた。自民側もあやふやな姿勢を容認したこともあり、自民選対幹部は「基本政策の変遷が有権者の投票行動に影響した」と語る。
自民は鹿児島選出の森山裕国対委員長が現地で指揮をとり、下村博文選対委員長や甘利明税制調査会長も三反園氏の応援に入った。終盤には二階俊博幹事長も鹿児島を訪れたが、党幹部は「負けるべくして負けた」と肩を落とした。
首相は来年10月の衆院議員の任期満了を見据え、衆院解散・総選挙の時期を慎重に探っているとみられる。現在は新型コロナウイルス対応や前法相の河井克行被告らによる公職選挙法違反事件などで内閣支持率も低迷している。その渦中に「保守王国」で取りこぼしたことは、自民党にとっても痛手となりそうだ。
一方、野党は県知事選で東京都知事選(5日投開票)に続いて対応が割れ、有権者に有力な選択肢を示すことができなかった。与党への批判票を結集できなかったことは、今後の衆院解散・総選挙をめぐる野党の動きにも影響を与えそうだ。(広池慶一)