【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は15日、大統領選に向けた陣営の選挙運動を統括するブラッド・パースケール選対本部長を降格させた。後任にはビル・ステピエン選対副本部長を昇格させる。トランプ氏は、民主党の大統領候補指名を確実にしたバイデン前副大統領に対し支持率で劣勢に立たされており、体制を一新して巻き返しを図りたい考えだ。
トランプ氏は15日、ツイッターでパースケール氏について「引き続きデジタル戦略を主導し、陣営の上級顧問も務める」と明らかにし、陣営に動揺が起きているとの観測を否定。その上で、新体制で「2度目の大勝利を得るのが楽しみだ」とし、「支持率は急上昇しているし経済も良くなってきた。今回は簡単に勝てそうだ」と主張した。
パースケール氏をめぐっては先月下旬、新型コロナウイルス危機を経て約3カ月半ぶりに南部オクラホマ州タルサで実施した大規模集会に参加者が集まらず、責任を問う声が出ていた。
しかも、NBCテレビと米紙ウォールストリート・ジャーナルが15日発表した世論調査では、トランプ氏の支持率は40%で、バイデン氏51%に11ポイントも引き離されていることが判明。この日発表された他の世論調査でも同様の結果が出たことが陣営の人事刷新の引き金になったとみられる。
トランプ氏は、勝敗のカギを握る激戦州でも軒並みバイデン氏の後塵(こうじん)を拝している。CNBCが15日発表した、南部フロリダや中西部ウィスコンシンなど激戦7州の有権者を対象に実施した世論調査の支持率は、バイデン氏49%に対しトランプ氏は43%だった。
また、モンマス大が同日発表した、特に注目される激戦州である東部ペンシルベニア州で実施した世論調査では、バイデン氏の支持率は53%でトランプ氏40%を13ポイントも上回った。
ただ同大は、2016年の前回大統領選の世論調査にトランプ氏支持と回答せず、実際には同氏に投票した「隠れトランプ支持者」が多数存在したとし、今回も同様の現象が起きる可能性があると指摘。トランプ氏が決定的な窮地に陥ったと断じることはできない。
NBCなどの調査では54%がトランプ氏の経済政策を支持すると答えており、同氏としてはウイルス危機後の経済を再生できるのは自分だけだと訴えて流れを引き寄せたい考えだ。