エチオピア「今年の貯水完了」 ナイル川ダム、下流エジプトは水利用量低下に危機感





大エチオピア・ルネサンスダムの衛星画像(ロイター)

 【カイロ=佐藤貴生】世界最長のナイル川でエチオピアが巨大ダムを建設し、水利用をめぐって下流のエジプトなどと対立している問題で、エチオピアが雨期の増水で今年分のダムの貯水は完了したとする声明を出した。必要な水の9割以上をナイル川に依存するエジプトは法的拘束力のある合意締結のため、エチオピアと交渉を続ける方針だ。

 問題になっているのはエチオピアが2011年に建設を始めた総工費約45億ドル(約4800億円)の「大エチオピア・ルネサンスダム」。同国首相府は21日、ここ2週間の降雨で今年分の貯水量に達したと表明。エジプトやスーダンと交渉を継続する意向を示した。

 エチオピアは今月からダムの貯水を始める意向を表明していた。中旬にはダムの水量が上がったとの報道を受けてエジプトが説明を求め、エチオピアは降雨による増水だとしていた。

 エジプトはエチオピアが急ピッチで貯水すれば下流に流れる水が激減するとし、貯水に時間をかけるよう要求している。水の供給は国民生活や経済に直結するため、国の命運をエチオピアに握られかねないとの危機感も背景にある。

 一方のエチオピアの狙いは水力発電。ダムが十分な貯水量に達したらアフリカ最大の水力発電所(6千メガワット)が稼働する予定で、同国の経済成長を支える電力を賄う方針だ。国内の電気が届かない地域への電力供給のほか、余剰電力をケニアやエリトリアなど周辺国に売る計画もある。

 エジプトに対する歴史的な反感もにじむ。ロイター通信によると、エジプトは1929年、かつて同国を保護領とした英国との間で、「水の配分に影響を与えるナイル川上流の事業を拒否する権利がある」との協定を締結した。エチオピアがイタリアから独立を果たしたのはこれより後の41年のことだ。

 エジプトが周辺国より優先的に利用できる地位を確保してきたナイル川の水について、エチオピアでは最近、「私たちのものだ」といった主張がSNSで相次いでいるもようだ。



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