【ロンドン=板東和正】英国が対中強硬策で存在感を高めている。足並みの乱れが懸念される欧州連合(EU)から離脱し、独立した外交戦略を推進したことが背景にある。中国が香港への統制を強化する中、英米などの5カ国で構成する機密情報の共有枠組み「ファイブアイズ」の中核をなす存在として、中国依存からの脱却を図り、対抗姿勢を強調する方針だ。
米メディアによると、訪英したポンペオ米国務長官は21日、ジョンソン英首相との会談前に非公開の別グループとの面会を行った。
面会相手は、与党・保守党の下院議員が4月に立ち上げた「中国調査グループ」のメンバーだ。新型コロナウイルス発生時の中国の初動対応を非難し、中国依存からの脱却を訴える同グループはジョンソン政権内で強い影響力を持ち、第5世代(5G)移動通信システムから中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を排除する政策を主導したとされる。ポンペオ氏は「英国が、中国に挑む用意がある同盟国であることを期待する」と伝え、連携を確認した。
英政府は同グループの設立以降、華為を排除。中国が香港で「香港国家安全維持法」を施行したのを受け、香港との犯罪人引き渡し条約を今月20日に停止した。また、約50%を中国に頼る鎮痛剤、抗生物質、抗ウイルス薬の原料の調達について、依存低下に向けた計画の策定に乗り出した。
中国の海洋進出にも対抗しており、14日付の英紙タイムズは、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中心とする空母打撃群が来年初めに極東に派遣される計画が進んでいると報じた。米国や日本との演習も想定されている。
1月末の英EU離脱は、英中蜜月の「黄金時代」終焉(しゅうえん)に大きく作用した。英政治学者のティム・スティーブンス氏は自身のコラムで「英国が欧州の束縛から解放され、国際問題で独自の道を歩めることが離脱の良い点の一つだとされていた」と指摘する。