養父母を死に追いやった運送会社社長への復讐(ふくしゅう)を誓った双子の兄弟を描いたサスペンスドラマ。復讐のために心を捨て、顔も名前も変え、裏社会に身を投じた主人公で双子の兄の竜一を演じる。自身にとっては、40代で初主演作となる。
「こういうタイプの人間が主人公のドラマは最近なかなかなかった。すごく濃厚なドラマになっている」
強い自信を口にする。双子の弟、竜二(高橋一生)と、キリシマ急便の社長、霧島源平(遠藤憲一)に対する復讐に挑むが、「表の竜二と裏の竜一で攻め込むスリリングな展開が見どころだが、復讐劇も一筋縄では行かず、そこが面白いところ。計画は立てるけど、ちょっとのことで兄弟にズレが生じたり」と話す表情は、その面白さに演じる側もワクワクしている様子を雄弁に伝える。
高橋については「呼吸を感じて合わせてくれるような部分がある」といい、「ふとした所作がシンクロしたら面白い。第1話では2人の声をシンクロさせたり」といったあたりを意識している。一方で「復讐心を持続する中で、竜二との微妙なズレが少しずつ描かれるが、それもすごく大事」と指摘する。
敵役の遠藤については「こういう怖い役をやると、瞬発力があり素晴らしく恐ろしいものがある」。ところが現場では「非常に面白い方。先日は遠藤さんが指揮者になりたいというご自身の夢を話してくれて。僕が『のだめ』でサントリーホールで振ったり、ウィーンに行ったりした話をして、『生のいい音が聞こえる場所でしたよ』と言ったら、『いいなあ』と羨ましがっておられた」と笑う。
このドラマも例に漏れず、コロナ禍の影響で放送開始が大きく遅れた。自粛期間中は「一度入れたスイッチをオフにすべきか、半分入れたまま保つべきなのか悩んだけど、1カ月を過ぎた頃に一回オフにした」と明かす。その間に全話の台本が出来上がったため、同じ場所のシーンをまとめて撮るという、「民放では経験のない撮り方」もした。各シーンがどの部分に当たるのか、「緻密に積み重ねる復讐劇なので、計算しながら演じる難しさはあった」と打ち明ける。
「明るい話ではないけれど、感情的に揺り動かされるものがすごく強い作品。その世界を楽しみに見てほしい」。最後まで、言葉の端々に自信があふれていた。 (兼松康)
たまき・ひろし 昭和55年生まれ、愛知県出身。平成10年のドラマ「せつない」で俳優デビュー。13年の映画「ウォーターボーイズ」で注目を集め、その後、フジテレビ系「のだめカンタービレ」、NHK連続テレビ小説「あさが来た」などに出演。10月放送開始予定の日本テレビ系「極主夫道」に出演予定。公式ホームページ内の限定ページでは自身撮影の動画も公開中。