米国は、スパイ行為や知的財産窃取の拠点だったとしてテキサス州ヒューストンの中国総領事館を閉鎖させた。
中国は、対抗措置として、四川省成都市の米総領事館を接収し、米中対立は、互いの在外公館を閉鎖しあう異例の事態に発展した。
ポンペオ米国務長官のトランプ政権の対中政策に関する演説は、こうしたさなかに発せられたメッセージである。中国への全面的な対決宣言といえよう。
ポンペオ氏は、中国共産党は「われわれの自由で開かれた社会を食い物にした」と批判し、習近平国家主席については「全体主義の信奉者であり、覇権への野望を抱き続けている」と断じた。「自由社会は専制国家に勝たなければならない」とも強調した。
この認識は正しい。
日本を含む全ての民主主義国家が危機感を共有し、主権と国益、自由や法の支配を守り抜かねばならない。
注目すべきは、ポンペオ氏が中国に対抗するため、「民主主義国家の新たな同盟」を構築する必要性を訴えたことだ。
中国は、香港の統制強化への先進7カ国(G7)などの懸念の声に聞く耳を持たない。南シナ海の実効支配、軍事化を違法とする指摘は完全に無視している。その一方で経済力を背景に、欧米が距離を置く強権国家、援助を求める貧困国や途上国、さらには国際機関に浸透し、国際社会の「多数派」を形成しようとしている。
中国の「覇権への野望」を打ち砕くには、価値観を共有する民主主義国家の結束が欠かせない。そうした「新たな同盟」を米国が主導するというのだろう。
ならばトランプ大統領が自ら、しかるべき場を設け、中国の諸問題を提起し、対処するための結束を各国に訴えるべきである。トランプ氏は5月末、香港の統制強化を批判した演説で、中国との全面対決への決意を示している。
トランプ氏に問われているのは、民主主義国家を糾合する指導力と、G7などの国際舞台での行動力だ。これまでの同盟軽視の姿勢を改めねばならない。
米中両国と関係の深い日本は、両国の対立激化と無縁ではいられない。中国の脅威にさらされている隣国、民主主義国家として、米国と協調して対立に関与していく覚悟が求められている。