「金」の国際先物相場が史上最高値を更新し続けている。新型コロナウイルスの感染拡大による景気後退懸念、潤沢な金融緩和マネーという要因に加え、米中の対立激化が世界経済の見通しをさらに不透明にし、「安全資産」とされる金の人気を高めており、節目の1オンス(約31グラム)=2000ドル突破も「時間の問題」(市場関係者)になっている。
週明け27日の米ニューヨーク市場で、金先物は7営業日続伸し、1オンス=1931・00ドルで取引を終えた。終値としての過去最高値を2営業日連続で更新した。1470ドル台だった3月中旬の水準と比べ約30%値上がりしている。
金は各国政府が発行する通貨などとは異なり、国や組織の信用力とは関係なく価値が安定する究極の安全資産とされる。このため景気の悪化懸念が強まると、安全性が評価されて買われ、逆に景気に楽観的な見方が広がると売られる。投資家のリスク許容度を映し出す“鏡”のような存在といえ、基軸通貨である米ドルと逆相関関係にあるのが特徴の一つだ。
その金が今年に入って騰勢を強めている理由は、終わりの見えない新型コロナとの闘いにある。
金価格はドル需要が逼迫した3月にはいったん下落した。しかし米連邦準備制度理事会(FRB)が大量のドル資金を供給し、主要中央銀行が協調して金融緩和を強化すると、金相場は行き場を失った緩和マネーを吸い上げ、再び上昇の勢いを取り戻した。足元では米中の覇権争いが金価格の押し上げ要因として意識されている。互いに総領事館を閉鎖し合う異常な事態は「開戦前夜」と受け止められている。
金相場が前回のピークをつけたのは、ギリシャ危機の真っただ中の2011年9月。コロナ禍は金相場の記録を約9年ぶりに塗り替えた。節目の2000ドル台も目前だ。エコノミストの豊島逸夫氏は「今は複数の要因が絡み合って金価格を押し上げている。ワクチンの開発に成功しない限り、相場が崩れることは考えにくい。(金融市場への影響力が大きい)米大統領選までは高原状態が続くだろう」と話している。(米沢文)