ムン・ジェイン「韓国経済は奇跡のような善戦」「これから本格的な反騰時期だ」→実際の現場を見てみると……

【朝鮮日報コラム】「奇跡のような善戦」の実像(朝鮮日報)

韓国統計庁が先月末に発表した「6月の産業活動動向」では、小売業の販売額が前月比で2.4%増加した。前年同月比では6.3%の増加だ。コロナ禍で急減していたデパートの売り上げも回復の兆しを見せている。7月のデパート3社の売り上げは前年同期比でやや増加したか、わずかな減少にとどまった。すると、待ってましたとばかりに「奇跡のような善戦」(文在寅〈ムン・ジェイン〉大統領)、「実物経済の反騰シグナルもより明白になっている」(企画財政部次官)といった自画自賛の言葉が相次いだ。

消費市場に活気がみなぎるのは喜ばしいことだ。しかし、数字に表れない現場の話がある。デパートの売り上げ上昇はどこから来ているのか。実際にデパートに行くと、それなりに賑わっている売り場は2か所。冬物衣料を5-7割引で販売する「逆シーズンイベント」コーナーとブランド品売り場だ。実際に海外ブランドの売り上げを除いて統計を計算し直すと、デパートの売り上げは依然として前年比でマイナスだった。さらにブランド品はほとんどが海外直輸入であるため、売り上げが増えたからといって国内の雇用が増えるわけではなく、協力会社の事情が好転するわけでもない。単なる「外華内貧」(外見は華やかだが内部は貧しい)にすぎないのだ。景気のバロメーターと呼ばれる男女衣類の販売は10%以上減少した。

大統領が最近、首席秘書官会議で「内需は第2四半期(4-6月期)から回復し始め、第3四半期(7-9月)にはさらに上向きになるとみられる」と述べたが、私が普段よく立ち寄る町の精肉店の店主は全く異なることを言っている。この店主は不動産のニュースに敏感だった。財テクのために投資しようしているのではない。「伝貰(チョンセ=入居時にまとまった額の保証金を賃貸人に預ければ、契約期間中に月家賃を支払う必要がない賃貸システム)よりも月貰(ウォルセ=毎月家賃を払う賃貸方式)が増えれば、市民たちがあまり肉を食べなくなるのではないかと心配だ」というわけだ。「住居費が上昇すれば可処分所得が減少する」という経済理論ではなく、十年以上の商売経験からくる勘だ。 (中略)

免税店も一部の在庫ブランド品を除けば売り上げは低迷したままだ。免税店の職員たちは6か月近く、週4日勤務や無給休職の状態になっている。

周囲を見てみると、依然として非常に多くの自営業者や中小企業が苦しんでいる。これらの人々や企業にとって、政府が打ち出す薄っぺらいバラ色の展望は虚しい偽りであり、怒りが爆発する内容だ。
(引用ここまで)

これも昨日の「最低賃金ガー」の話に通じますかね。
「奇跡のような善戦」とは先月27日にムン・ジェイン大統領が大統領府での会議で述べた言葉。

文在寅大統領「韓国経済、奇跡のような善戦…本格的に反騰するだろう」(中央日報)

第2四半期の経済成長率が-3.3%で済んだことに対しての言葉、だそうですよ。
確かに韓国の減少幅はOECD加盟国の中でもおそらく1、2位を争う小ささではないかと思われるのですが。
経済のよりどころを貿易に頼っている韓国が第3四半期、どれだけ伸びることができるかは不明。まだまだ外国は立ち直りきっていないので輸出に頼ることができないのではないのか、と感じています。
実際に7月の貿易統計(速報)でも前年同月比で輸出は7%減。
実態を見てみるとそこまで楽観的になれる理由はないよなぁ……というのが朝鮮日報の記事。
この発言を伝えたNAVERやdaumの記事でもコメントは辛辣なものが多かったですね。

文大統領、韓国経済を「奇跡のような善戦」と評価=ネットは「望みと現実は区別して」(レコードチャイナ)

6月の雇用統計はいつものように悪く。
失業率は4.3%。
いわゆる青年層(韓国でのみ扱われている15-29歳の雇用関連数字。国際的な若年層雇用は15-24歳)失業率は10.7%。短時間雇用なども組み入れた実質的な失業率とされる拡張失業率3の数字は26.8%。
これで「奇跡のような善戦」と言われても、国民は鼻白むだけ。

しかも、この数字は公的資金をじゃばじゃば投入してのもの。
一昨年の段階から「いまはまだ不況がきていないからこうやって公的資金投入して数字をかさ上げしてもなんとかなっているんだろうけど、本格的な不況になったら支えきれるのかね?」と何度か書いてきましたが。
本格的な不況に対しては「Kニューディール」とやらでさらに公的資金を積み上げるという手法に出てきたわけです。
「見た目の失業率を抑える」効果は確実にあるでしょうが、「6~7月から徐々に回復傾向を見せており、これから本格的に経済反騰させる適期」……なぁ。
本格的な反騰……なにやら「所得主導成長は来年から本格的に効果を発揮する」と常に言い続けていたアレと相似してますね。
そういえば「所得主導成長」の話、とんと聞かなくなったなぁ。まだ韓国で元気にやっているんですかね?
ちなみに7月の雇用統計は明後日の朝に発表予定。

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