大阪医科大(学校法人大阪医科薬科大)の元アルバイト秘書の女性が、賞与などの支払いを求めていた訴訟で、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は10月13日、二審・大阪高裁判決を変更し、女性側を逆転敗訴とする判決を言い渡した。裁判官5人全員一致の判断。
裁判の争点となったのは、有期雇用であることを理由とする不合理な格差を禁じた「旧労働契約法20条」。一審では女性敗訴となったものの、二審は賞与について、正社員の支給基準の60%を認め、大学に約110万円に支払いを命じていた。
判決後の会見で女性は、支援者に向かって「非正規全体の裁判だということで運動を続けてきた。前に進められなくて申し訳ない」と発言。次のように悔しさを語った。
「企業が人件費を払いたくないというのは分かるが、そうであってはいけないと言うのが、裁判所の役割だと思う。2100万人もいる非正規の人のことなんて、まったく見ていないんだなと悲しくなりました」
●不合理とまではいえない
女性はフルタイムとして勤務。隣の研究室の正職員秘書と比べても、多くの教授らを担当してきたとして「同一労働同一賃金」を訴えていた。
二審の大阪高裁は、長期雇用を必ずしも前提とせず、業務内容にも制限がある契約職員にも賞与が払われていることなどに着目。同大の賞与には、「在籍し、就労していたことそれ自体に対する対価」としての性質があるとして、功労の度合いも加味し、正職員の支給基準の60%は必要とした。
一方、最高裁判決は、同大の賞与は人材の確保・定着のためのものとしたうえで、正規職員にはアルバイトにはない業務があったり、配置転換の可能性があったりすることから、職務内容と配置の変更の範囲に「一定の相違があったことも否定できない」と指摘。
さらに、同大が業務内容の性質から、秘書を正職員からアルバイトに転換している最中であったことや試験によるアルバイトから契約職員・正職員への登用制度があることを踏まえ、賞与を支給しないことは「不合理であるとまで評価することができるものとはいえない」と判示した。
なお、高裁では認められた、私傷病による欠勤中の賃金についても、雇用を維持確保することを前提とした制度などとして、アルバイトには認めなかった。
結果的に、裁判を通して認められた不合理な格差は、高裁で確定した「年5日の夏季特別休暇」分に相当する5万110円だけということになる
●弁護士「一般論は述べられていない」
労契法20条は現在、パートタイム・有期雇用法8条・9条に引き継がれている。また、厚労省の同一労働同一賃金ガイドラインでは、正社員全員に何らかの賞与を支給しているのに、短時間・有期雇用者に支給していないケースは、「問題となる例」として紹介されている。
女性側弁護団の谷真介弁護士は今回の最高裁判決について、「大阪医科大の事情についての判断で、一般論は述べられていない。判決を悪用する事例が出てくることを危惧している」と強調した。
旧労契法20条がらみの裁判では同日、契約社員への退職金が争われていたメトロコマース事件でも、労働者側の逆転敗訴となる最高裁判決が出ており、非正規労働者にとっては厳しい判断が続いた。