
【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は党創建75周年の10日に行われた軍事パレードでの演説で、時折声を詰まらせながら、兵士や住民への感謝の言葉を繰り返した。
【写真】10日、平壌の軍事パレードに登場した大陸間弾道ミサイル(ICBM)
自身の反省も口にした異例の演説で、背景には長引く経済制裁に加え、新型コロナウイルスや台風被害の「三重苦」にあえぐ北朝鮮の苦境が透けて見える。
「予想外に襲った防疫と災害復旧の現場で発揮した献身には感謝の涙なしではいられない」。正恩氏は演説で新型コロナ対策や今夏の台風被害からの復旧に取り組む兵士への感謝の意を表明した。感極まった正恩氏の演説にパレード参加者は涙を流して聴き入った。
正恩氏はまた、国内でコロナ感染者が1人も出ていないと指摘し、「わが人民に吐露したい真情は『ありがとう』の一言だ」と強調。一方、「努力が足りず、人民が生活上の困難を克服できていない」とも述べ、制裁を打開できていない自身への反省を口にした。
正恩氏は3月、平壌総合病院の着工式を開き、10月10日までの完工を指示。だが、コロナの影響で1月末に国境封鎖に踏み切り、資材調達が困難になっているためか、同日までに病院が完工したとは伝えられなかった。
パレードに登場した大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの新型兵器以外、目立った成果が乏しい正恩氏。金東葉・慶南大極東問題研究所教授は「対内的に人民を重視する内容で構成された」と分析した。正恩氏は演説を通じ、内部結束や求心力強化を図ったとみられる。
正恩氏は「党組織と政府、武力機関が人民のために真心を尽くして働くよう、厳しい要求を提起し、闘争していく」とも強調。金東葉氏は、正恩氏が来年1月に予定する党大会を通じ、党や軍など体制の引き締めを強めるとの見通しを示している。