
欧州で新型コロナウイルスの感染が再び急速に拡大している。世界保健機関(WHO)によると、欧州で直近1週間の新規感染者数は、3月の「第1波」の3倍近くに達した。17日にはフランス、ドイツ、イタリアなどで1日あたりの新規感染者数が過去最多を更新。フランスでは同日からパリを含む複数の都市圏で夜間の外出禁止措置が始まった。
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「クリスマスがどうなるかは、この先の数日、数週間で決まる。私たちの行動にかかっている」。新規感染者数が7830人となったドイツのメルケル首相は17日、国内の流行が「非常に深刻な局面」にあるとした上で、国民に不要な外出を控えるよう訴えた。
フランスでは17日に3万2000人を超え、過去最悪の水準が続く。同日午後9時からパリなど9都市圏で、原則的に夜間の外出が禁止された。飲食店や映画館なども午後9時で営業を終了し、6月に飲食店の規制が解除されて以降、夕食などを楽しむ人でにぎわっていたパリの夜の街角は、再び静けさに包まれた。
夜間の外出には通勤や通院、ペットの散歩など理由付きの証明書の携帯が義務付けられ、違反すると最大で3750ユーロ(約46万3000円)の罰金と禁錮刑が科される場合がある。
仏政府は少なくとも4週間は夜間の外出禁止措置を続ける予定だ。このため、影響を受ける業界には、総額10億ユーロ(約1235億円)の支援策を講じる。売り上げが落ち込む飲食店やスポーツクラブなどへの月額1万ユーロ(約124万円)の補償や、従業員の失業手当の給付などが盛り込まれた。
今月14日から飲食店の営業停止措置がとられているオランダでは、不要な移動の自粛が求められる中、ウィレム・アレクサンダー国王夫妻が16日に休暇でギリシャの別荘に出かけたことが批判を集め、国王夫妻は旅程を変更して17日に帰国した。
各国で1日あたりの新規感染者数は「第1波」のピーク時の2~3倍近くで推移しているが、死者数は当時に比べてはるかに低く抑えられている。検査体制を拡充した結果、新規感染者には軽症や無症状の例も多く含まれるようになったほか、重症者の治療手順の改良などが影響しているとみられる。
ただ、WHOのテドロス事務局長は16日の記者会見で「死亡例の報告は3月と比べて減っているが、(欧州の)多くの都市で入院者数が増えており、今後数週間で集中治療室の空きがなくなると報告されている」と指摘。感染者の増加が医療態勢を逼迫(ひっぱく)させるとして危機感を示した。【久野華代(パリ)、八田浩輔】