死亡ひき逃げ事故 40代女性に無罪判決 福岡地裁


死亡ひき逃げ事故 40代女性に無罪判決 福岡地裁

 福岡県宗像市の市道で、路上に横たわる男性を乗用車でひいて死亡させそのまま逃げたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)と道交法違反(ひき逃げ)に問われた同市の女性(49)に対し、福岡地裁は26日、無罪(求刑・懲役3年)を言い渡した。岡崎忠之裁判官は、タイヤから検出されたDNAでは男性をひいたとは立証されず「女性の直前に、他の車両が男性をひいたとしてもおかしくはない」と結論付けた。

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 女性は2019年8月1日午前1時35分ごろ、同市田久6の市道を時速約30キロで乗用車を運転。路上に横たわる男性(当時49歳)の体をひいて大動脈断裂などのけがで死亡させ、救護措置や警察に通報しなかったとして逮捕、起訴された。

 女性は逮捕時から「靴をひいたと思った」と一貫して否認し、公判でも無罪を主張。女性の車の左前タイヤから男性のDNAが検出されたが、発見時に脱げていた靴からもDNAが検出されていた。女性は当時娘の送迎中で人が倒れていたと110番を計2回しており、車に同乗していた娘も証人出廷し「衝撃は感じなかった」と証言していた。

 検察側は靴よりタイヤに付着したDNA量が多いことなどから「女性がひいたのは明らか」と主張していた。これに対し判決は▽靴は冷蔵庫に入れるなど特別な温度管理がされていない▽臨場した県警警察官が素手で靴を触った可能性がある▽実況見分の際に被害者役の捜査員が靴をはき、ぬれた路面に横たわった――など証拠品管理の不手際を指摘。岡崎裁判官は「DNAが相当程度毀損(きそん)し、捜査員のDNAが付着するなど汚染された可能性は否定できない」と批判した。

 また判決は、実況見分をした県警警察官と司法解剖した医師の公判での証言は矛盾しているとし、岡崎裁判官は「(警察官の)証言は遺体の損傷状況という客観的証拠と整合せず、信用性が高いとは認め難い」と判断。事故現場は深夜も一定の交通量があり、別の車が男性をひいた可能性についても言及した。

 女性側の安東翔太弁護士は「証拠を適切に評価していただいた」とコメント。一方、福岡地検は「判決内容を詳細に検討し、上級庁とも協議のうえ適切に対応する」、県警交通捜査課は「判決に関するコメントは差し控える」としている。【宗岡敬介、浅野孝仁】



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