菅義偉首相が自民党の野党時代に記した単行本をもとに、このほど改訂版の新書として出版された「政治家の覚悟」(文藝春秋刊)から、公文書に関する記述が削除されたと指摘が出ている問題で、出版元の文藝春秋は26日、文春新書編集部のコメントを発表した。「特定の文言の削除を意図したものではない」としている。
削除されたと指摘が出ている記述は、12年3月に出版された単行本「政治家の覚悟 官僚を動かせ」の第四章「東日本大震災で露呈した政府の機能不全」にあるくだり。
「千年に一度という大災害に対して政府がどう考え、いかに対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」「議事録は最も基本的な資料です」と書かれており、議事録の保存の必要性に触れている。
編集部はコメントで、新書の内容について「(単行本のうちの)菅氏の政治キャリアのわかる第一章、第二章をベースとして、菅氏の官房長官時代のインタビューなどを加えて編集したもの」と主張。一方で、単行本の第三章と第四章については「野党時代の菅氏の民主党政権への批判が中心」とした上で「本の総ページ数など全体のバランスを考えた上で、編集部判断で収録しない構成案を作成した」という。
その上で「新政権誕生というタイミングで、この構成案を菅氏に示し、了解を得て出版したもの」とし、菅首相も了承していたことを明らかにした。
「千年に-」のくだりについては「当時の民主党政権の東日本大震災への対応について述べたもの」だと、している。