教育熱心な保護者の新たな選択肢:モンテッソーリ教育小学校の現状とあきる野の新設校

これまで教育熱心な保護者の間では、我が子を進学校へ入学させ、一流大学へ進学させることが“常識”とされてきました。しかし、その常識は今、少しずつ変化の兆しを見せています。来春、東京都あきる野市に開校する「あきる野モンテッソーリスクール」は、こうした教育観の変化の延長線上にある、注目すべき動きと言えるでしょう。

日本の教育の未来を示す、多様な学びの選択肢を象徴するイメージ日本の教育の未来を示す、多様な学びの選択肢を象徴するイメージ

モンテッソーリ教育とは?その哲学と世界的な影響

モンテッソーリ教育は、100年以上も前にイタリア初の女性医師であり教育学者でもあったマリア・モンテッソーリ博士によって考案された教育法です。その核心にあるのは、「子どもは自らを成長・発展させる力を生まれつき持っており、大人は教えるのではなく、その力を信じ、自由を保障し、自発的な活動を援助する存在に徹すべきである」という思想です。この革新的な教育法は世界中で広く受け入れられ、バラク・オバマ元アメリカ大統領、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏、Google共同創業者のラリー・ペイジ氏といった著名人も、幼少期にこの教育を受けていることで知られています。日本においてもその認知度は高く、多くの幼稚園や保育園で導入・実践されています。

日本におけるモンテッソーリ教育の現状:幼児期と小学校の課題

モンテッソーリ教育は、幼児教育としては日本でも広く実践されていますが、6歳から12歳の「児童期」、つまり小学校課程でこの教育法を実践する学校は極めて稀です。現在、国内で確認できるのはわずか4校ほどに過ぎません。来春、あきる野モンテッソーリスクールが開校すれば、小学校におけるモンテッソーリ教育を実践する5番目の学校として、新たな選択肢を提供することになります。

来春開校予定のあきる野モンテッソーリスクールの建築模型、革新的な学習環境を提案来春開校予定のあきる野モンテッソーリスクールの建築模型、革新的な学習環境を提案

「学習指導要領」の壁とフリースクールの役割

小学校におけるモンテッソーリ教育の普及を阻む大きな要因の一つに、「学習指導要領」の壁があります。日本の「学校」は、学校教育法第一条に定められた「一条校」と呼ばれるものが一般的です。一条校は、学校教育法に基づき策定された学習指導要領をベースに教育を行うことになっていますが、この学習指導要領にはモンテッソーリ教育が含まれていません。そのため、モンテッソーリ教育を主軸とした一条校の設立は非常に困難な状況です。

あきる野モンテッソーリスクールも、この枠組みには当てはまらない「一条校ではない」学校、いわゆる「フリースクール」として運営されます。フリースクールであるため、国や自治体からの補助金を受けることはできず、その費用負担は保護者が担うことになります。あきる野モンテッソーリスクールの授業料も、月額約10万円が予定されており、保護者にとっては大きな経済的負担となる可能性があります。しかし、それでもなお、子どもの個性を尊重し、自立を促す教育を求める声は高まっています。

結論

あきる野モンテッソーリスクールの開校は、従来の画一的な教育観から脱却し、多様な学びの選択肢を求める保護者の増加を明確に示しています。学習指導要領という制度的な制約の中で、フリースクールという形で新たな教育実践を試みる動きは、今後の日本の教育に一石を投じることになるでしょう。高額な学費という課題はあるものの、子どもの可能性を最大限に引き出すモンテッソーリ教育への期待は、ますます高まると考えられます。

参考文献