世界各地のポピュリズム政治家の言動が、国内でもたびたび報じられる。まず思い浮かぶのはトランプ米大統領だ。2016年大統領選での発言は「鮮烈」だった。「大統領になったら、メキシコとの国境に壁を築く」と言い放ち、「万里の長城」をほうふつとさせるイメージを提示した。「南からの移民は犯罪予備軍だ」とも叫んだ。ローマ教皇をはじめ各所から反発の声が上がった一方、選挙民へのアピール効果は抜群だった。
国民の不満を見抜き、彼らの反移民感情をあおる同氏の言動は、典型的なポピュリストの手法だ。しかし、ポピュリズム系政党が多く存在する欧州が今注目するのはトランプ氏ではなく、日本だという。どういうことか。(文明論考家、元駐バチカン大使=上野景文)
▽はびこるポピュリズム政治家
ポピュリズムはしばしば「大衆迎合主義」と訳される。
自由主義や共産主義、イスラムなどと違い、体系性をもった理念、自律性のある思想ではない、というのが多くの政治学者が語るところである。「政治現象」としては存在しても、それ自体を定義づける思想はないのだ。