自民党総裁選での意外な結果が、日本の政治評論界とメディアの報道姿勢に大きな注目を集めています。長年にわたりテレビ番組で政治解説を担ってきた政治評論家の田﨑史郎氏(75)は、総裁選前に小泉進次郎氏の勝利を強く予想していましたが、結果は高市早苗氏(64)の勝利に終わりました。しかし、田﨑氏の議論はそこで終わらず、高市新総裁に対する継続的な批判的発言に対し、元衆議院議員の金子恵美氏(47)が公に疑義を呈したのです。この一連の出来事は、政治評論家の中立性とメディアの報道姿勢に、新たな議論の波紋を広げています。
総裁選予想が的中せず – 田﨑史郎氏の発言の変遷
自民党総裁選を巡り、田﨑史郎氏は一貫して小泉進次郎氏(44)の勝利を予測していました。例えば、9月30日放送のTBS系『ひるおび』では、「議員票でも党員票でも上を行く。この構図が崩れる可能性は低い」とまで断言し、“当選確実”という見方を示していました。しかし、実際の総裁選では決選投票の結果、高市早苗氏が小泉氏を破り、新総裁に選出されるという予想外の展開となりました。
田﨑氏は総裁選後、出演した番組で自身の予想が外れたことについて、「取材不足」だったと謝罪しました。しかし、その後も高市新総裁に対する“不安”を繰り返しています。投票結果発表直後、生出演していたテレビ朝日系『ワイド!スクランブル サタデー』では、「高市さんは党運営や政権運営がかなり苦労されるんじゃないか」「どれくらい党内を掌握できるかっていう問題。恐らく依拠するのは旧安倍派の人たちが多いと思う。石破政権では非主流に置かれていた人たちが政権の中心に入っていく、党全体がちょっとギスギスしそうな感じはしますよね」とコメントし、高市氏の統治能力に疑問を投げかけました。
さらに、7日にBS-TBS『報道1930』に出演した際には、高市氏が党執行部の人選において麻生太郎氏(85)の意向を多分に汲み取った人事を行ったことに対し、「こんなすごいことやるんだと感心しました」と皮肉る発言も飛び出し、高市氏への批判的な姿勢を崩しませんでした。
自民党総裁選の結果発表を見守る関係者の様子
金子恵美氏が田﨑史郎氏の発言姿勢を公然と批判
こうした田﨑氏の一連の発言に対し、元衆議院議員の金子恵美氏が公に異議を唱えました。2012年から2017年まで衆議院議員を2期務めた金子氏は、8日に自身のYouTubeチャンネルにジャーナリストの須田慎一郎氏と対談した動画を投稿。総裁選に至るまでの小泉進次郎氏に関するメディア報道について語る中で、田﨑氏を名指しし、「その筆頭に田﨑さんがいませんか?」と指摘しました。
金子氏は、メディアの報道姿勢、特に田﨑氏の主張についてさらに踏み込み、「昨日も、あるジャーナリストの方と話しましたが、ちょっと、ジャーナリストから見ても、(田﨑氏は)“やりすぎだな”って言ってましたよ」と述べ、自身の見解を裏付けました。そして、「いくらなんでも世論を誘導、扇動しすぎですよね、っていうくらい(田﨑氏は)”小泉さん上げ“で、上げはいいんですけど”高市さん下ろし“が凄かったな、という印象がとってもあります」と、田﨑氏の報道姿勢が特定の候補者を不当に持ち上げ、別の候補者を貶めるかのような偏りがあったと強く批判しました。
金子氏による田﨑氏への批判は、SNS上でも大きな反響を呼びました。《田﨑史郎氏のような「御用評論家」が、小泉氏を持ち上げ高市氏を下げる。こうした世論操作こそ、報道の堕落だ》《金子恵美さんど正論。田﨑史郎氏は未だにテレビ番組で高市早苗さん下ろし発言を連発。偏向発言甚だしい》といった賛同の声が多数寄せられ、「オールド評論家」「引退したほうがいい」といった厳しい意見も散見されました。
政治評論の中立性とメディアの役割への問いかけ
これまでも田﨑氏の発言は「中立性に欠ける」といった指摘が多く、その発言が物議を醸すことは少なくありませんでした。今回の自民党総裁選を巡る一連の議論は、政治評論家やメディアが、特定の候補者を「上げ」、別の候補者を「下げる」報道姿勢が世論形成に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにしています。
政治というデリケートな分野において、評論家やメディアに求められるのは、客観的な事実に基づいた公正な情報提供です。しかし、今回の田﨑氏のケースのように、明確な予測が外れた後も特定の政治家への批判的な姿勢を続けることは、その中立性や専門性、さらには信頼性を問われる事態へと発展しかねません。
「世代交代」の波は、政治家だけでなくテレビのコメンテーターにも押し寄せているのかもしれません。視聴者が求める情報が、より客観的で多角的な視点へと変化している現代において、情報を提供する側は、その発言が世論に与える影響を常に意識し、公正かつ専門的な視点から情報を提供し続ける責任があると言えるでしょう。
結論
自民党総裁選を巡る田﨑史郎氏の予想とその後の高市氏への発言、そしてそれに対する元衆議院議員・金子恵美氏の公然たる批判は、日本の政治評論のあり方とメディアの責任について深く考えるきっかけとなりました。客観的で公正な情報提供が求められる時代において、評論家やメディアは、その発言が世論に与える影響を常に意識する必要があります。情報過多の現代において、読者や視聴者が信頼できる情報を見極める上で、政治評論家の中立性と専門性は今後ますます重要となるでしょう。
参考文献
- ヤフーニュース記事「総裁選は“稼ぎ時”か――。連日連夜テレビに出演し、自民党の展望を語っていた政治評論家の田﨑史郎氏(75)。」(https://news.yahoo.co.jp/articles/db0d4245c34d467b4aeb304183992283681c3845)
- 金子恵美公式YouTubeチャンネル (2025年10月8日投稿動画)
- TBS系『ひるおび』2025年9月30日放送
- テレビ朝日系『ワイド!スクランブル サタデー』放送
- BS-TBS『報道1930』放送