「洪楠基(ホン・ナムギ)副首相兼企画財政部長官の解任を強く要請する」という青瓦台(チョンワデ、韓国大統領府)国民請願に対する同意が28日、21万人を超えた。経済の指令塔に対して数十万人の国民が「解任すべき」と主張するのは洪副首相が初めてだ。
解任請願は、株式譲渡所得税賦課対象となる大株主基準を3億ウォン(約2760万円、1銘柄あたり株式保有額)に拡大する案を洪副首相が固守しながら始まった。しかし淑明女子大の申世敦(シン・セドン)経済学部名誉教授は「単に3億ウォン基準だけでこれほど多くの人が解任に同意したとは考えにくい」と述べた。「経済の失策に対する国民の不満と内閣改造要求がそれだけ深刻なレベルとみるべき」という説明だ。
これまでの経済副首相や企画財政部長官は「専門性に基づく揺るがない独自のリーダーシップ」という軌道を維持してきた。政治的な影響と非専門的な入れ知恵に対して所信に基づく対応を見せるのが基本だった。2010年12月の「予算問題」当時、当時の安商守(アン・サンス)ハンナラ党代表が「我々はバカなのか。お前たちに予算権があるのか」と声を高めたが、尹増鉉(ユン・ジュンヒョン)企画財政部長官は予算案をそのまま進めた。
しかし洪副首相は災難支援金給付決定、財政健全性論争などでみられるように、青瓦台・与党の言いなりになることが多かった。延世大のヨン・ガンフム経営学部教授は「今の洪副首相は自分の声を出すよりも、青瓦台や与党が要求することを執行するだけのようだ」と指摘した。
市場と認識の乖離も信頼を落とす要因だ。いわゆる「伝貰(チョンセ、契約時に一定の金額を賃貸人に預け、月々の家賃は発生しない不動産賃貸方式)物件不足」が深刻化する状況で「伝貰価格の上昇幅が鈍化している」(14日)、「伝貰物件の取引が増えた」(18日)などと発言し、ひんしゅくを買った。洪副首相本人が「伝貰難民」になるという事実まで伝えられ、世論の批判と嘲弄はさらに強まった。新型コロナのため今年9月に就業者数が前年同月比で39万人減少したという統計が発表された16日にも、洪副首相は「10月から雇用市場が回復するはず」と楽観的な発言をした。
小さな絵にこだわるという指摘も出ている。洪副首相は各種ソーシャルメディアネットワーク(SNS)を通じた広報に熱心だ。24日には財政準則に関するコメント5件をフェイスブックに一度に載せた。市場への影響を懸念してSNSの活用を控えるムニューシン米財務長官とは対照的だ。ソウル大のクム・ヒョンソプ行政大学院公企業政策学科教授は「洪副首相が毎日、政策発表を担当するようだ」とし「ところが政策にはお互い衝突するものがあり、発表した政策が数日間で変わることも多い」と指摘した。
任命初期から続いている「パッシング」の声も負担だ。今年7月、開発制限区域(グリーンベルト)について洪副首相が解除を検討する可能性に言及したが、翌日、国土交通部次官は「検討しない」と否認した。結局、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「グリーンベルトは保全する」と述べて一段落した。不動産政策のほか、税制改編案、各種マクロ・財政政策でも洪副首相の主張が黙殺されたり覆されたりする事例が多かった。
「更迭説」「パッシング」の声が出るたびに、文大統領は「今後も頑張ってほしい」(3月13日)、「力強く進めてほしい」(7月21日)など力を与える発言をした。しかし、洪副首相が政策決定過程で実際に主導権を発揮した事例は少ない。
漢陽大のキム・テユン行政学科教授は「個性の強い政治家出身者を傘下の経済部処長官に座らせておいて、副首相は調整に限界がある人物を任命した」とし「結局、調整をするなという話であり、洪副首相個人の限界もあるが、任命権者の失策も確実にある」と述べた。